「遅いです…僕がどれだけ待ったと思うんですか!!」
「ごめんなさい…」
「今日の僕は優しいから、血をくれたら許してあげます」
「…本当?」
「疑うんですか……?」
私は首を振った。カナトが嘘をつく筈ない。だって彼は嘘が大嫌いなのだから。
彼が飲みやすいように服を脱いでいく。今日はどこから吸血するのだろうか。これからの快楽にドキドキしながら待っていると、彼はキスをしてきた。
今までの言動と違い、キスはいつも優しい。優しいキスに思わず声が漏れた。
「気持ちいいですか?」
「カナトのキス…好き…っ」
「可愛いですね。血を吸う時には、思いっきり牙を刺して、もっと気持ちよくしてあげます」
自分で服を緩ませ、彼が吸いやすいようにする。すると、彼は笑顔でこう言った。
「快楽に溺れているマナミの顔、僕はすっごく好きです」
首元にひやりと牙が当たった。思いっきり突き刺された牙はとても痛い。でも、この痛みさえも快感なのだ。
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「カナトっ…美味しいね!」
「そうですね。人も少なくて僕は満足しました。それに、キミと一緒に食べるんですから、もっと美味しいです。ね、テディ」
「また一緒に来ようね」
美味しいケーキを食べた私たちは会計を済ませて家に向かった。
家に着くと、レイジお兄ちゃんが待っていた。何か怒っているみたいな気がする。
「こんな遅くまでどこに行っていたんですか?」
「カナトとケーキ屋さんに行ってた…言わなかったこと怒ってる…?」
「勿論です」
彼がこんなに表情をするのは珍しい。そして、今日の私は謝ってばかりだ。
「ごめんなさい」
「謝れば済むと思っているのですか?」
「…レイジお兄ちゃん」
「そんな目で見ても無駄です。後で私の部屋に来なさい」
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言われた通りにレイジお兄ちゃんの部屋に来た。椅子に座っていると、レイジお兄ちゃんから紅茶が差し出された。…お仕置きじゃなかったっけ?
「お飲みなさい」
「え…?」
「紅茶が冷めてしまいます。早く飲みなさい」
「う、うん」
彼が入れてくれた紅茶はいつも通り美味しかった。ふぅ…と一息つくと、彼がにやりと笑っているのが見えた。紅茶に絶対何か入れたんだ。
「気づきましたか?媚薬です。大好きでしょう?」
「…ん」
「あー…これじゃあお仕置きになりませんかね。では、貴女が耐えられないぐらいの快楽を与えてあげますよ」
今日の記憶はそこで終わっていた。
20130121