―コンコン
「入りますよ」
「はーい」
ドアは開けっ放しなのに、ノックをきちんとしてくれるのはレイジお兄ちゃんだ。
「また開けっ放しですか。あれほど鍵をかけときなさいと言ったのに直らないんですね。貴女に脳はないんですか」
「んー…みんな優しいから大丈夫」
「だからダメなんですよ。それよりも、もう学校に行く時間ですが、準備はできてますか?」
「ばっちり!」
スクバには必要最低限の物を入れて背負う。レイジお兄ちゃんと一緒にリビングまで降りたら、既に他の兄弟が集まっていた。
「みんなおはよう!」
「マナミちゃんおはよ。今日も美味しそうな血の匂いがするねぇ。吸いたくなるよー」
「ライト五月蝿いです。マナミの血はボクのです」
「はっ、俺様のだろ?」
「…誰のでもないもん」
三兄弟の喧嘩に巻き込まれないように、早めにリムジンに乗り込む。いつの間にかシュウお兄ちゃんとスバルが座っていた。
「おはよう」
「あぁ」
「……おはよう」
この二人の返事はぶっきらぼうだけど、この雰囲気は大好きだ。居心地がとてもいい。のんびりとした空間に身を任せていると、いつの間にか隣にシュウお兄ちゃんがいた。
「喉が渇いた」
「え、まって…っ」
「オレも飲ませろ」
「んん…っ」
私の血は魔王とヴァンパイアのハーフのお母さんと人間の血が混ざっている。兄弟から聞けば"極上の血"らしい。
「…あっ」
「もっと声出せ」
「マナミの声、好きだぜ」
「…んっ……あぁ」
彼等に血を与えるのは好きだ。私が必要とされているから。それに、この快楽に溺れているから。彼等はもう満足したのか、牙を刺した部分をぺろっと舐めた。すると、傷はあっと言う間になくなった。少しのヴァンパイアの血を引き継ぐ私の傷をヴァンパイアが舐めれば、すぐに治るのだ。
「さっさと入りなさい。学校に遅刻しますよ」
レイジお兄ちゃんが三兄弟をリムジンに押し込んだ。
「あぁ!マナミちゃん食べられてる」
「お前等とケンカすんじゃなかったぜ」
「ライトもアヤトも五月蝿いです。ね、テディ…テディもそう思うよね。マナミはボクのモノだよね」
一気にリムジンの中が賑やかになった。
「私はみんなのモノだよ」
20130118