「え、ちょ、名前ちゃん!!」



ガシッと掴まれた腕。振り払おうとしてもそんな力は残っていなくて、立ち止まってしまった。すると今度は涙が止まらなくなってしまった。目からぽろぽろ流れ出る涙は、畳に染み込んでいった。



「もう、こんなの嫌だったのに…ニーナのせいで、まただ…。何のためにここまで頑張ったのか分からないよ…!」

「ちょっと名前ちゃんマジでストップ!!」

「嫌…!」

「あー…もう!」



腕を引っ張られた。転ぶと思ったのに、ニーナの腕の中にいた。びっくりしすぎて涙は止まってしまった。ニーナ、少し怖い。



「オレがいつアンタがキライって言った?」

「…」

「むしろ、アンタのこと大事にしたいぐらいなんだけど」



また涙が溢れた。私、いつ涙もろくなったんだろう、止まらない。



「ニーナ…ずるい〜…」

「まだ泣いてんのー」

「ニーナが嬉しいこと言うからいけないんだぁ〜…」

「ヨシヨシ」

「う〜…」



私達のやり取りを見ていた先輩は安心したのかため息をついて微笑んでいた。そういえばここプレハブ…柔道部だった。



「……恥ずかしくなってきた、ん」

「嵐さん達のせいっスからね!」

「元はと言えばニーナが悪い。柔道部に来ねぇから」

「うっ…」

「ニーナ、嵐くんの言う通りだよ!部活に来なさい!」



彼の腕の中にいるものだから、彼が焦っているのが感じ取れた。何だかそれが可笑しくて笑ったら、ニーナは私をじっと見つめた。



「名前ちゃんの笑顔の破壊力マジパネェ…」



彼の言っていることよく分からないけど、とりあえずこれは言っておこうと思った。



「部活に出なさい…!」

「お、押忍!」



これからはサボらないで部活行くように見張っとこうかな…なんて。



20121114

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