ありのままの私。 久しぶりにこの格好で外に出るかもしれない。とりあえず、いつもの服装じゃなくて、お洒落な洋服をタンスの奥から引っ張り出した。 準備をしていたら、待ち合わせの時間まで近づいてきたので、急いで支度を終わらせて家を出た。
遅刻は…してない、よね。 周りを見渡しても、新名旬平の姿は見当たらなかった。少し疲れた、と思って壁に寄りかかったら声が聞こえた。
「名前ちゃん…?」
「あ、うん」
「チョリーッス!」
「ちょ、ちょりーっす…?」
「よくできました」
声をかけてきたのは、待っていた彼だった。よく分からない挨拶を真似して返すと、昨日みたいに頭をなでてくれた。なんか嬉しい。
「髪の毛キレイな金髪だったんだなー。オレ一瞬気づかなかったし」
また嬉しい言葉をくれる新名旬平。今日で嬉しいが2つもできた。
「新名旬平…今日はどこに行くの?」
「あー…フルネームで呼んじゃう感じ?ニーナでいいって!」
「ニーナ……」
「そ!今日は花見にでも行こうかなって。ついでに釣りも」
「ニーナ、釣りが好きなの?意外」
「よく言われる」と笑いながら言う彼はとても眩しかった。でも、急にハッとした顔になっておずおずと彼が言った。
「オレの好きなスポット行っても大丈夫?つまんなかったらちゃんと言ってよ?」
「ううん。ニーナの好きな場所でも平気。寧ろ嬉しい、かも」
そう言った私の手を掴んで、行こうと言い、出発した。ニーナ、少し赤い気がする。 少し歩いて行くと、森林公園に着いた。たくさんの木々がピンクに染まっていて、とても綺麗だった。ひらひら桜の花弁が舞い降りていた。 久しぶりにちゃんと桜を見たかもしれない。あの時からずっと下を向いて歩いていたから。
「ここでも十分キレイだけど、オレの穴場のスポットまでエスコートするぜ?お嬢様」
「何それ」
笑いながら私は答えた。ニーナが手を差しのべたので、私はぎゅっと彼の手を握った。ニーナの手、大きくて安心する。 少し歩くと、釣り場が見えてきた。あんまり人がいなくて、ニーナは釣り準備をしていた。慣れてるなぁ。
「隣で一緒に釣ろうぜ」
「うん」
桜を見ながら、のんびりと釣りをしている時間はとても心地よかった。今まであったことなんか思い出させないぐらいに。
・ ・ ・
あれから何時間か経った。ニーナも私も全然釣れなかったけど、魚が釣れた瞬間はすごく嬉しかった。釣れた時はニーナも一緒に微笑んでくれていた。
「ニーナ…ありがとう」
「なーに言ってんの!どういたしまして!」
本当に、ありがとう。 久しぶりにこんなに楽しい時間を過ごせた。明日からはまたあの私に戻るけど、多分いつもより浮かれてるかもしれない。
20121113
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