今日はいつもと違って、美奈子先輩と一緒にいる。あの時、つい美奈子先輩って呼んじゃったのに謝ると「謝らないで!むしろ嬉しい」と優しい顔で言ってくれた。
「名前ちゃーん!一緒に帰ろう?」
「あ、今日呼び出されてるので先に帰ってください」
「…平気?」
「はい。何かあったら呼びますから安心してください」
「じゃあ終わるまで待ってるね!」
美奈子先輩と別れて向かったのは校舎裏。呼び出したのはいつものあの子達。今日は何されるのかを考えながら歩いていった。
校舎裏に着くと、いつもよりも人が多かった。
「ねぇ、苗字さん。私達、どうしてまだこんなこと続けてるか分かる?」
「いえ…」
「分からないの!!?」
パシンっと言う音が響いた。頬がじんじんする。その拍子に眼鏡が飛んでいった。
「あーメガネ飛んでったねぇー。もういらないよねぇー?」
そう言うと、彼女は眼鏡を踏んづけた。あー…あの眼鏡意外と高いのになぁ。彼女の方をじっと見ていると、私の目の色に気づいたのか、一歩下がっていた。
「何よ、その目……気味悪い…」
「わっ!本当だ!真っ赤だぁ」
「真っ赤だったらまだ設楽先輩の方がステキだよ〜!」
「そうね!あははははははははっ!」
「オレがなんだ」
噂をすれば影…だっけ?後ろからあの時見た、同じ真紅の瞳をした彼がきた。したら先輩って言うんだ。
「この子より、設楽先輩の瞳の方がキレイだよねぇって話をしてたんですぅ!」
「ふぅーん…」
「やっぱりそう思いますよねぇ!」
じっと見つめられる瞳。あの時みたいに死神だと分かっても焦らないしたら先輩は一体なんだろうか。私も先輩の瞳をじっと見つめ返した。
「お前らより…むしろオレよりもいい瞳だ。ほら、行くぞ」
「はぁ!?設楽先輩正気ですか!だってこの子」
「お前らのくだらない嫉妬に付き合ってられないな」
ぐいっと腕を引っ張られる。私は勢いよく立ち上がり、したら先輩について行った。
ガラガラとドアを開けた先は音楽室だった。ピアノの前に座ったしたら先輩は、とても似合っていて、この人にはピアノが必要なんだなと何となく分かった。
「いつもあぁなのか?」
「いえ。今日はいつもよりも、です。…あ、あの時、お世辞でも嬉しかったです」
「何をだ?」
「私の瞳が綺麗だって」
「あぁ…お世辞じゃない。本当だ。力強くて綺麗な瞳だよ」
お世辞、じゃなかった。この学校の人はおかしい人が多いのではないのだろうか。私をこんなにも褒めてどうしたいの…?
はっと美奈子先輩の事を思い出した。急がなくちゃ。したら先輩にお礼をしてから電話しよう。
「したら先輩」
「何だ」
「本当にありがとうございました」
「あぁ…また何かあったらここに来てもいいぞ」
「…考えます」
また、頼りそうになった。私はまだ、美奈子先輩だけでいっぱいいっぱいだから…まだだめ。
私は音楽室から出て、急いで美奈子先輩に電話をした。
20121206
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