「では、この紐を足に結んで待っていてください」
二人三脚の説明を受けて、紐をもらった。ニーナは器用にそれを足に結んだ。よし、と言うニーナの顔がすごく近かった。見つめ合っている状態でいたら彼は「はーヤダヤダ」と呟いて前を向いた。何が嫌なのか…。
「もしかして、私が足が遅いのが嫌、なの?」
「ちがっ…!もうアンタはどうしてこうもネガティブ思考なんかなぁ。前にも言ったけど、オレはアンタを大事にしたいって思ってんだから、そんなマイナスに受け止めないことな!」
「うん。ありがとう」
私達の前のグループが終わり、いよいよ私達の番になった。立って前に歩き出そうとすると、ニーナが「スタートは名前ちゃんの右足ね」と言ったので、私は頷いた。
「位置についてー…よーい…」
「名前ちゃん行くぜー!」
「うん…!」
「ドンっ!!」
スタートの合図が鳴った。
・ ・ ・
「………ごめんなさい」
私が盛大にずっこけたせいで、結果は4位…最下位だ。しかも膝は擦りむけるし最悪。周りからは"さすが死神"という声がした。
「そんなことよりも保健室行こう、な?」
「大丈夫、ただ擦りむいただけだから」
「ごちゃごちゃ言いませんっと!」
「え!?」
体が軽くなったと思ったら、ニーナにお姫様抱っこされていた。恥ずかしくて少しバタバタしていたけど、耳元で「暴れたら落ちんじゃねぇかなぁ」と言うから、怖くて大人しくした。落ちるのは、嫌だ。
保健室に着いたのはいいけど、肝心の先生がいなかった。ニーナは「ちょっと待ってて」と言って手当の準備をし始めた。
「染みるかも」
「やだ……っ」
「文句言っても痛みは逃げません。ガマンガマン」
「はーい…っ」
慣れているのかニーナはすぐに手当を終わらせた。
「何か考え事しながら走ってた感じ?」
「なんで?」
「アンタ、また顔に書いてあるから」
またか。 書いているはずはないんだけど、どうしてニーナにバレるのだろうか。
「本当の私をみんなに見せたら、受け入れてくれるのかなって…。ニーナも…小波先輩達も受け入れてくれたから、もしかしてって考えてた」
「そっか」
ニーナは私の話を真面目に、真剣に聞いてくれた。自分で悩むよりも、他の人に聞いてもらったほうがよかった、と今気づけた。胸の辺りがスッキリしている。
「まぁ、アンタがそうしたいって思う日が来たら協力すんぜ?」
「ん、ありがとうニーナ」
外ではフォークダンスが始まったのか、曲が流れ出した。
「せっかくだから踊ろうぜ」
「うん!」
こうして今年の体育祭は無事に終わった。
20121117
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