拍手プチ連載
庭球/向日
オレとあいつがまだ小さかったとき
二人だけの秘密基地によく出かけて
行く度に毎回、毎回大切な約束を忘れないように言い合っていた
でも、そんなものはとても邪魔な存在だったんだ
【約束なんて忘れてくれた方がいいんだよ】
最近気がつくとなを避けている。体が勝手に反応しちまって、近くを通るだけでも気配を消そうと必死になっていた。
それに気づいたジローは「がくとって本当にダメダメだー」とか部活中に言いやがった。…否定はできなかったけど。
いつも通り部活が終わって校門に向かうとあいつが立っていた。どうせ侑士待ちか、と考えたけど、今日は侑士部活早退したんだ。じゃあ…何だ?
なの近くに行きたいけど動かない体をどうしようかと悩んでいたら、あいつがオレに気づいたらしく、オレの元へ走ってきた。
「岳人…!」
「っべ…」
オレの足動けよ…っ!
立ち止まったままのオレの腕をあいつは掴んだ。
「はぁ…はぁ……ようやく話せた…」
「なん、だよ…」
「最近岳人私を避けてる」
「んなわけ」
「嘘つかないで。岳人が嘘をつく時の癖ぐらい分かってるんだから。何年幼なじみやって来たと思ってるの!」
―幼なじみ。
やっぱりオレはこの壁を越えられないんだな。
「それに」
"幼なじみ"という言葉にオレは衝撃を受けているのに、もっと追い討ちをかけるかの様にあいつは言った。
「ずっと傍にいる、岳人から離れない、って昔約束したの忘れたの?」
20120702