拍手プチ連載
庭球/向日
君とあいつが並んでる姿だけで
君に見せたくない感情が
オレの中で渦を巻く
オレはいつものオレでいたくて
でも、そんな簡単にできなくて
悲しませることしかできないんだ
【いまさら嫌いになれるわけがなかったよ】
「最近、なさんと忍足くん一緒にいるよね」
「噂では付き合い始めたとか…」
「うっそー!…でもなんかお似合い、かも」
「確かに」
笑いながら横を通り抜けていく知らないやつら。でも、なの話をしてたら聞くしかないじゃんかよ、と思いつつさっきまで聞いていた。
誰だよそんな噂流してるやつ。でもそれを聞いたあいつは強く否定はしなかった。もしかして恋人になれる可能性もあるのかな、って顔に出てるのが丸わかりだった。オレだっていつも一緒にいたのに、そんな噂ひとつも出回らなかったぞ。何が違うんだろうな。
そんなこと考えてたら、横からいつも聞きなれている声が聴こえた。
「がーくとっ!おはよう!」
「よ」
「…なんか最近冷たい。元気もないみたいだし」
「気のせいだ」
「岳人どうしたの、本当に」
「うるせえよ!!お前はオレといるより、侑士といるほうが楽しいんだろっ!!」
ハッと気づいた時には遅かった。なは目に涙を浮かべて、それでもこぼれないように必死に堪えていた。ごめんな、って謝りたいけど、今のオレに素直という言葉は見つからなかった。
「……そっか。うん…うん」
自問自答してるように見えたあいつは、校舎に向かって走っていった。…オレがあいつの涙に弱いこと知ってるくせに。
なのあとを必死に追いかけた。
20120512