拍手プチ連載
庭球/向日
いつも言いなれているこの台詞
言うたびに、言うたびに、胸を苦しめて
いい加減なれろって思う
慣れたときは
それは彼女を諦めた瞬間
【ただの幼馴染みだよなんて言い飽きてる】
侑士に声をかけることに成功した彼女は、帰り一緒に帰ってくれるっておおはしゃぎしていた。
オレはよかっな、としか声をかけられなかった。
「岳人!忍足くんと一緒に校門まで来て、お願い!」
「は?」
「だだだって、忍足くんだけだと緊張しちゃうし…。忍足くんの後ろ歩いてくるだけでもいいからっ!」
「…わかった!」
本当はわかったなんて言いたくない。目の前で侑士となが一緒にいるのを見るなんて、地獄でしかない。
部活も終わって、なとの約束を守って、侑士と校門まで行った。
オレを見て…じゃなくて、侑士を見て顔を赤く染めた彼女を見たら、オレの中のどす黒い感情が渦巻いた。
「じゃ、オレはここで」
「なんや…岳人も一緒やないの?」
「おう」
「なちゃんと岳人って結構仲が言いって聞くけど、まさか付き合ってるん?」
その言葉に、あっ…と声をもらしたなをオレは見逃さなかった。好きな人にそんなこと言われたくないもんな。
「違うぜ、ただの幼馴染み」
納得した侑士はなと一緒に帰っていった。
「くそっ…!」
オレは校門を思いっきり殴った。
じんじんと痛む拳が、現実だと言うことを教えてくれてた気がした。
20120318