好きに溺れた
彼は私のことが好き?
そんなはずがない。だって私は嫌われるようなことしかしてないのだ。何をどう感じて好きと私に伝えたのか理解不能だ。
「うそ」
「本当ですよ。私の発言が信じられないのですか?」
「からかってる時もあるし、私硫黄に嫌われるようなことしかしてない」
「確かに、そうですね。でも貴女が、名前が好きなのは変わりないです」
「待って、顔が、ちか……っ!」
キス、されてる。待って私ファーストキスだよこれ。されるがままに体を預けてしまった。啄むようなキスに私の頭は真っ白になってしまった。
そしてちゅっと言うリップ音をたてて、唇は離れた。
「すみません。名前があまりにも可愛かったので止まることができませんでした」
口では謝っているものの、顔は笑っている。わざとやったな…。硫黄を睨むと、彼の指が私の唇に触れた。
「その表情、すごくそそられます」
「硫黄って変態?」
「そうかもしれませんね」
そういうと二度目のくちづけをされた。今度は深いやつ。ぞくにいうディープキスってものだ。息をしようと口を開けたのが間違いだった。硫黄の舌がにゅるっと私の口の中に入ってきた。そして歯茎をなぞっていった。すごくぞくぞくして、力が入らない。立っていられないと感づかれたようで、腰をつかまれた。でもまだくちづけは止まらない。頭がくらくらし始めて、もう限界に近づくと唇がようやく離れた。私の唇と、彼の唇を繋ぐかのように糸ができていた。そしてぷつんっと切れた。
「ねぇ、あたってる」
「正直すぎて困ってます」
「やらないからね」
「自分でどうにかしますよ」
「それぐらいしないと困る。キスだって今のが初めてなんだから」
私の発言に驚いていた。なんだよ。いけないのかよ。ふてくされていると、ぎゅっとやさしく抱きしめられた。いい匂いがする。私、この匂い好き。
「怖がらせてしまったら、本当にすみません」
「ううん。大丈夫。私も硫黄が好きだったみたいだから」
2016/08/20
鳴子硫黄