思い出、作ろう?



カランカランと氷のぶつかる音がなる。ゆっくりと溶けていく氷を見て、あぁ夏なんだと実感した。外では蝉がミンミンと鳴いている。風鈴の音がチリンチリンと鳴っている。そして、水しぶきの音がする。


「遙くん、宿題終わってないのにお風呂に入らないでよ。」
「ここが落ち着く。」
「そうかもしれないけど…私終わっちゃうよ?」


遙くんに呼ばれて来たはずなのに、彼は全然宿題が進んでいなかった。私が残りの宿題を消化している時からずっと水の中だ。確かに遙くんが水が好きなのは知っている。でもここまでひどいとどうしようもできない。宿題も終わり、ここに残る理由もないので、帰る支度をした。家に着いたら録画してたドラマ見よう。


「じゃあ私帰るね。」


そう聞こえるように言ってから立ち上がると、彼が出てきた音がした。


「帰るな。」
「どうして?私もう宿題終わらせたし…。」
「まだ分からない部分がたくさんある。」
「最初から真面目にやらないからいけないんです…!」


玄関に向かおうと歩いても彼が邪魔をする。どうしてこうもして帰らせてくれないのかすごく不思議だ。


「私は帰りたいの…!」
「オレは帰らせたくない。」
「だからなんで!」
「最後の夏休みぐらいオレと一緒にいろ。」


彼からそんな言葉が出るとは思わず、顔を赤らめてしまった。不意打ちはよくない。ばか。



七瀬遙
20130829

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