一言で世界は変わる
どうせ私は眺めているだけの存在でいいと思っていた。彼には友達がたくさんいて、常に周りには人がいる状態。確かスイミングスクールからの付き合いだとか聞いたけど、その間にわざわざ割り込むことなんてできない。ポーカーフェイスだけど、水のことになると目を輝かせる彼が本当にかっこよくて、私は一瞬のうちに恋に落ちた。いわゆる一目惚れと言うことだ。今日も私はただただ彼を眺めていた。
「ねぇハルちゃん!見てみてこのイワトビちゃんTシャツ!」
「いいな、それ。」
「確かに可愛いかも。」
イワトビちゃんを見ても目を輝かせるんだ。何か可愛い一面見ちゃったかも知れない。少し嬉しくなって頬が緩くなっていた。その姿を見ていた黄色い後輩くんと目が合ってしまった。
「キミもイワトビちゃん好きなの?」
「え!?」
興味津々に聞いてくる彼の勢いに負けて、はいとしか答えられなかった。私の返答を満足気に聞いた彼は、ポケットからイワトビちゃんを取り出した。
「はい、これ!ハルちゃんが作ったイワトビちゃんプレゼント!」
「ちょっと渚!?」
「七瀬君が作ったの…?」
「器用でしょ?」
「うん…。」
彼が作った物だと知ると、愛着が一気に湧いた。これは宝物にしよう。
「なぁ。」
「へ…!?七瀬君…!」
「また欲しかったら作ってやる。」
「え、あ、うん、ありがとう。」
私のキューピットはイワトビちゃんなのかも知れない。
七瀬遙
20130828