その笑顔をフィルムに閉じこめて
「あ‥。」
目の前にはバレーを頑張っている彼がいた。中学も一緒で、この烏野の学校に来ることは知っていた。だから、私もここにいる。
中学の頃は一人で練習していたから、今の彼はすごく楽しそうだった。だってほら、トスが上がっただけであんなに嬉しそうだ。そして、勢いよくボールを打つ。本当に、楽しそう。ぼーっと彼を眺めていると、危ない!という大きい声がした。
「い‥っ」
彼の放ったボールは、見事に私に命中だった。痛いと少し嬉しいという気持ちが溢れてきて異常だと思った。
「だ、だだだいじょうぶっ?」
「うん、平気。」
「ごめん、なさいっ!」
「謝らなくてもいいよ。元気な日向くん見れたからそれだけでいい。」
私が笑顔でそう言うと、彼も笑顔でありがとう!と言ってくれた。この笑顔、家宝にしたいぐらいだ。
「たしか‥苗字さん、だよね?」
「うん、覚えてくれてたんだ。」
「だって中学いっしょだから当たり前だ!」
「そっか‥当たり前、かぁ。」
彼の特別にでもなった気分だった。
「あ、みんな呼んでるからもう行くね!また明日っ!」
「また明日。部活、頑張ってね。」
「ありがと!」
お日様みたいな彼の笑顔。やっぱり大好きで、胸の奥がきゅーっとした。
日向翔陽
title:HENCE
20130105