ファンは増えないきっとあなたは、ひとりでいい
「くそぉ…」
帰っていく藤くんを、教室から眺めながらそんなことを呟くアイツ。藤くんの周りにはたくさんの女の子がいて…あ、あの子安田好みだな。
「安田」
「んだよ…」
「なんでそんなにモテたいの?」
「そりゃあ男の子ですからー。モテたいに決まってまーす」
「つまり、今だかちやほやされたいのかぁ」
「おう」というと安田は机に突っ伏した。夕陽に照らされた安田の髪はとても綺麗だった。こうも愛しいと思っているのが私だけだなんて、なんか少しズルい気がする。
安田は知らないだろうけど、実はモテてるんだよ。私、安田をずっと見てきたから知ってる。他の子が、チラチラ安田を見てるから、思わずシャーペンの芯折っちゃう時も何回もあったぐらいだ。
こんなに好きなのに言わないのは、私の優しさか臆病なのか分からない。
「ねぇ、安田」
「なーにー…」
「帰ろう」
「おー」
安田貢広
title:深爪
20120717