沈んでいく愛
「財前くんのピアスって素敵…。」
「なんや急に。」
右耳についてるピアスを弄りながら話すと、財前くんに嫌な顔をされてしまった。褒めただけじゃんかぁ。キラキラ光に当たる5色のピアスは、私の興味を誘うのにぴったりのものだった。
「ねぇ、財前くん。」
「なんや。」
「ピアスって引っ張ると痛い?耳たぶちぎれちゃう?血も出ちゃう?」
「まさかとは思うが…引っ張ろうなんて思うてへんやろな…?」
「せーかいっ!」
私が答えるのと同時に、財前くんのピアスをひとつ思いっきり引っ張った。するとピアスは私の手の中にあった。…ということは、財前くんの耳たぶちぎれたのかな?大きい叫び声聞こえたからちぎれたよね!血もどばどばだね!
パッと財前くんの顔を見ると苦痛に歪んでいた。
「名前さん、こんなん…っはぁ…好き、やなんて…っ…未だに、理解できへん…っ!」
「財前くん綺麗だよ!どうしよう!残りの1個も引っ張っていいかな!」
「っ…今更やろ…」
財前くんのお許しが出たので、もう1個のピアスも引っ張った。痛そうに叫ぶ財前くんが本当に素敵でかっこよすぎて耐えられる気がしない!
「光くんの耳たぶの血いただきまーす」
「こういうときだけ、ずるいッスわ…っ」
ちゅうちゅう耳たぶから出る血を全部飲む勢いで吸った。口の中が鉄の味がする。光くんの一部が私の中に入って、一緒になっていく。幸せすぎて吸う強さも速さも大きくなっていった。
「ぷはっ」
「満足しました…?」
「うんっ!光くん大好きっ!!」
財前光/沈んでいく愛
20120525