死すべき愛情だったとでもいうのか。
痛い、痛いとずっとずっと言っている私の大好きな人。顔は殴らないようにぼこぼこと殴っていく。嫌いではない。むしろ大好きだ。
でも手が止まらない。
「…っ名前!やだやだ痛いっ!」
「音也は痛いの大好きなんでしょ?私知ってるよ。」
「ねぇっ……名前って、俺の…こと、っ、嫌い…っ…?」
「そんなわけない!!大好き…愛してるの…っ!」
「…そっか。」
音也はありがと、と言いながら笑った。
あぁ…私、この笑顔大好き。胸がきゅーってなるのを感じながら、私は音也を殴った。
それからは音也は"痛い"じゃなくて"大好き"や"愛してる"を言いながら殴られていた。
殴りすぎて、音也の体はボロボロ。血だっていっぱい出してる。もうそろそろ死んでもおかしくないんじゃないかな。私の手も、じんじん痛み始めた。
「音也。」
「…んー?」
「大好き。」
「俺も大好きだよ。」
音也をぎゅうっと抱きしめると、抱き返してくれた。そして、私を抱きしめてくれた腕はどんどん力をなくしていった。
一十木音也
title:虫喰い
20120317