猫の大群




にゃー。にゃーにゃー。にゃにゃー。
猫の鳴き声がたくさん聞こえてくる。理由なんて簡単。猫の大群が私を追っているからだ。またたびでも体についてるのかな、とか冷静に考えても追われている理由は見つからなくて。


「あ、」


石につまづいた。ゆっくり後ろを向くとたくさんの猫が近づいてくる。これは死ぬ、かも。覚悟をして目をギュッとつぶれば、何故か急にに猫の鳴き声が止み静かになった。そしてぐらぐらと暗闇の中で揺れる。恐る恐る目を開ければ、そこには自分の彼氏がいた。あ、夢だったのか。


「大丈夫?うなされてたよ?」
「…平気。ちょっと変な夢見てた。」
「どんな?」
「猫の大群に追われる夢。」


そういうと彼は急にに笑い出した。なんだっていうんだ。こんなに怖くて死ぬ思いをしたのに。慎二だって猫みたいなんだから同じ思いすればいいのに。本当、なにこいつ…。

拗ねた私に気づいたのか笑い止んだ。


「ねぇ…どうしたの?」
「…別に。そんなに笑われるなんて思ってなかったから。」
「う…ごめんね…?」
「やだ。怖かったのに。慎二なんか大っ嫌い。」
「ごめんってば!」


さっきから慎二は必死に謝ってきた。
そうだよね。これって、私が勝手に怒ってるだけだよね。怖い夢だって話してなかったし、慎二は悪くないんだ。

私は慎二のうつむいている顔を、下から覗きこんだ。結構近い距離で少し顔を赤くした慎二が可愛かった。


「ごめんね。私勝手に怒ったりして。」
「…大嫌いってのは嘘だよね?」
「うん、大好き。慎二ごめんね。」
「ううん。オレこそごめんね。」


二人ともえへへって笑い合いながら手を繋いだ。

好き。大好き。
慎二にこの思いが手から伝わればいいな。




黒子のバスケ/小金井慎二
素敵企画様に提出したもの。
ありがとうございました。
陽向りさ
20110819

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