あの子がほしい
僕には思いを寄せている子がいる。別に特別可愛いわけじゃないし、お話したことも少しだけ。
たまにホスト部にやってくるなまちゃん。指名するのは僕じゃなくて崇。でも、崇といつも一緒にいる僕は、イヤでもなまちゃんが目に入る。イヤじゃないけど。
「あ、あの銛之塚先輩は何かおすすめなケーキとかありますか?」
「……光邦に聞いた方がいいと思うが」
「いいいいいえ!!それは何というか、あー…とにかく埴之塚先輩はダメです!」
そこまでイヤがられるなんて少し傷つくなぁ。ショボン、とすぐに態度に出てしまった。それでも僕はケーキをぱくぱく食べていた。美味しい。
そんな様子を見ていて崇はなまちゃんに質問していた。
「どうしてそこまで光邦を嫌がる」
「あ…嫌じゃないんです!!ただ、恥ずかしいというか、何というか…」
「?」
頭にはてなを浮かべている崇。
僕はその隣にいるなまちゃんの態度を見て確信した。さっきまでの僕は嘘みたいに今はニコニコしていた。
意を決して、もじもじしていたなまちゃんが口を開いた。
「あの…埴之塚先輩はどんなケーキが好きですか?」
「ん〜…僕はね、苺のたくさん乗ったケーキも好きだし、フルーツいーっぱいのケーキも大好きだけど…」
「だけど?」
「なまちゃんの作ったケーキ食べてみたいなぁ!!ダメだったら、なまちゃんを食べるのでもいいよねぇ!」
あの子がほしい
(そう言った後のなまちゃんは顔を真っ赤にしていた)
埴之塚光邦
20110522