打ち上げ花火




今日はバスケ部みんなでお祭りに来ている。リコちゃんと私は浴衣で、男子部員は全員浴衣か甚平。
その中でも一番に目立つのは小金井くん。私の彼氏だからそう見えちゃうのかもしれない。恋のフィルターはこんなにもすごいのね…。そんな小金井くんをじっと見つめていたら、顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。



「名前ちゃん。そんなに見つめられたらオレ恥ずかしいんだけど。」
「え!?あ!ごめんなさい!そんなに見るつもりじゃ…っ。」
「はいはい。バカップルはそれぐらいにしなさい!それじゃあ、行くわよ!」



そう言ってみんなで屋台を巡りに言った。
小金井くんは射的や輪投げや他にもたくさんの屋台で遊んでいた。私はこういうのは苦手だから、見ているだけになっている。小金井くんは気を使ってくれて、たまに一緒にやる?って聞いてくれるけど、気持ちだけで十分だった。

少し疲れた私は、ベンチで座ってるねと声をかけてから座った。前には楽しそうに金魚すくいをする小金井くん。見ていてこっちも楽しくなる。
金魚すくいを楽しくやっている小金井くんにふと知らない女の人が声をかけていた。誰だろう?不思議になった私はその様子をじっと見ていると、その女の人と小金井くんがどこかに歩いていってしまった。



「こ、小金井くん…!?」
「名前?」
「あ…日向くん…」
「泣いてる、のか?」


自分で気がつかないうちに泣いていた。日向くんに会わせる顔もなくて、私は走った。
着いたのは広い原っぱで、私はうずくまった。



「どこかに行くんだったら…ひと声かけてよね、バカ。」



一人で呟いた後、急に涙が止まらなくなってきて、声を殺しながら泣いた。幸い夜だから、他の人に見られる心配はなかった。



「バカっ…ぅ、小金井くんなんか、大っ嫌いなんだからっ!!」
「オレが何?」



上から声が聞こえた。この声は…



「小金井くん…?」
「名前ちゃん泣いていた?」
「な、泣いてなんかない!」
「うそでしょ。こんなに目に涙溜めてる人が泣いてないなんて変だよ。」
「ぁ…ん、小金井くんの…バカ、」



私は小金井くんの胸をぽこぽこ叩いた。泣いてるから力なんかでなくて、拳が触れているみたいな感じになっていた。



「どうして勝手にいなくなったの?」
「勝手に、いなくなった、のは小金井くんのほう、じゃない…!女の人と、どこかにいって…私…私…!」



言い終わる前に私の顔は、小金井くんの胸の中にいた。よしよしと子供を慰めるように頭を撫でながら説明してくれた。



「あの人、道に迷ったみたいで、目的地まで連れていってあげただけだよ。」
「…そうなの?」
「うん。」



いつの間にか私は泣き止んでいて、小金井くんの顔をじっと見つめた。今度はそらすこともなく、見つめ返してくれた。



「オレが好きなのは名前ちゃんだけだから、心配しないでね。」
「うん…私も、小金井くんだけ好きよ。」
「ありがとう。」



打ち上げ花火
(その日見た花火が一番きれいでした)



小金井慎二
20110327

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -