叱ってよもっと



「で、ラケットを折っちゃったんだ」
「うん…ごめん」
「……折っちゃったものは仕方ないよ。次は気を付けてね」
「はい…」



そう言って退くんは部屋から出ていった。退くんの大事なラケット借りて折ったなんて、ぷんぷん怒ってくれると思ったのに、いつもと変わらない。次は気を付けてねって。何だか寂しいよ。



「そこで何してるんですかィ?」
「沖田くん。いや、別に…」
「そんな顔してたら、誰でも気づきますぜィ。名前が元気がないくらい」



私そんな顔してたの、かな。自分のほっぺをぷにぷにしていたら、沖田くんに笑われた。そして頭にぽんっと手を置いて、何かあったんですかィ?と聞いてきた。
私が退くんのラケットを折ったこと。思ったよりも怒られなかったこと。これまでにも色々怒られることもしたのに、同じ怒られ方しかしないこと。全部沖田くんに話した。



「山崎に何でそこまで怒られたいんですかィ?」
「怒られるってことは、そこまで愛されているってことだと思うの。変、かな…?」
「さぁ…な。オレは別に」



沖田くんのしゃべってる声が急に途切れた。というか邪魔をされた。何故かって?副長が来たからに決まっている。



「てめぇー!総悟っ!!またサボりやがって!」
「サボってねぇでさァ。今休憩中なだけですぜィ、土方さん」
「おめぇに休憩なんでねーよ!!」



この二人の様子を見てたら何だか悲しくなってきて、涙が出てきた。こんなに怒っている副長が、どれだけ隊員のことが大事か分かる気がしたから。退くんも何でこれぐらい怒ってくれないんだろう。大事なもの、ほとんど壊しちゃったんだよ?ラケットも羽も靴も何もかも。自分がドジって壊しちゃったものもあるけど、怒られたくて壊しちゃったのもいくつかはある。なのに、何で、かな?

泣いている私に、気づいた二人は喧嘩するのをやめていた。沖田くんにさっき話したから、なぜ泣いているか察したみたいで、何も言わずに頭をなでてくれた。副長はどうしようもみたいで、部屋に戻ると言って歩いて行ってしまった。



叱ってよもっと
(私ってそんなに退くんに愛されてないの?)



山崎退
20110219

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