打った、打った打った!
「……山崎くん」
「何?」
「ミントン、教えてください!」
「……へ?」
始まりは30分前ぐらいのこと。私は物凄い運動音痴で有名らしい。それを友達が何とか改善させようと思ったらしく、とりあえず簡単そうなバドミントンから始めてみれば?と言われた。バドミントン…ミントンといえばあの人しかいない。そう思って辿り着いたのは体育館でした。
「べ、別にいいけど…急にどうしたの…?」
「何とか運動音痴を改善しようかと思いまして」
「あぁ、なるほどね。俺でいいなら教えてあげるよ」
「ありがとうございます!」
さて、ここからが地獄で。ラケットを持って、軽く山崎くんが打った羽を打ち返そうとしても全然当たらない。一度も打ち返せないまま1時間が経とうとしていた。
「…ごめんなさい」
「あ、謝らないでよ!」
「いやいや。山崎くんも疲れてるはずなのに、一度も打ち返せないなんて」
「俺は大丈夫だから!」
「ムリはしなくて平気です。次で最後にしますから…」
「……」
山崎くんは困った様子をしていた。渋々納得してくれて「ラスト行くよー」と言って羽をラケットで打った。私は、また打ち返せないだろうと思って、気を緩めてラケットを振った。ポン。何かがラケットに当たった音がした。そして羽が山崎くん側に飛んで落ちた。
「……?」
「打ち返せた…!」
「誰が?」
「キミが!」
「…本当に?」
「ホントにホントだよ!」
ようやく脳内で理解出来た。本当に、打ち返せたんだ…!思わず山崎くんに抱きついた。軽く涙声になったけど「ありがとう…」私はそう言った。
打った、打った打った!
(私は運動音痴じゃない!)
山崎退
20100718