恋の病
「今日はどれ食べようかなぁ…」
「うーんと…僕はこの苺のいーっぱいのったケーキがいいと思うなよ〜♪」
「でも、今日は苺って気分じゃないんだよなぁ」
かれこれケーキ選びで1時間ぐらい経っているだろう。ここまで悩んだのは初めてかもしれない。いつもは光邦と一緒にたくさんケーキを取って、すぐにいただきますと言って食べるのに。
「こんなに悩むなんて珍しいよ〜…。どこか悪いところでもあるの?」
「分からない…。でも最近光邦といると、こんな調子なんだよね」
「あ、それってもしかして……僕に恋しちゃったからかな?」
「え…?」
「きっとなまちゃんは、恋の病なんだよ!」
さらっと環くんみたいなことを言った光邦。
…恋の……病…?
まさかそんなことあるはずがない。だって光邦とは幼なじみで、いっつも馬鹿みたいに遊んで、ケーキを一緒に食べて…
あ、なんか顔が熱い。分かった。恋の病じゃなくて、本当に熱なんだよきっと。
「ねぇ。僕がその病気治してあげようか?」
「いや、別に恋の病じゃないから大丈夫…」
全部を言い切る前に、光邦はキスをした。そして「えへへ〜♪」と笑った。
え、今のファーストキスなんですけど。高3でファーストキスなんて遅いかもしれないけど…。
どうすればいいの、私。
恋の病/埴之塚光邦
20091228