私のココロ快晴 (7/9)
あれから風丸くんは陸上部から姿を消した。その後しばらくはなんだか陸上部には暗い空気が流れていた。
でも、私は彼を送り出したことを後悔はしていない。
彼が自ら選んだ道だから。私は全力で彼を応援するの。
あの日の帰り。風丸くんが陸上部にいる、最後の日。私は最後に風丸くんと一緒に帰った。
やっぱり寂しい気持ちに浸りながらも、濡れているアスファルトを一歩ずつ、一歩ずつと進んでいく。
これが風丸くんと帰る最後の道。
そう思うと時間が止まってくれればいいのにって思った。余計に時間が早く感じて。家までの距離がいつも以上に短く感じた。
「あの、さ…」
目を細めて足元を見るように歩いていると風丸くんはゆっくり口を開けた。
「舞華…。あの…良かったら…サッカー部のマネージャーにならない、か…?」
もじもじと言い辛そうに首筋を掻きながらそう風丸くんは言葉を紡いだ。
それは、私にサッカー部に一緒に行かないかという誘いだった。
一瞬、私は迷った。
ここで風丸くんと一緒に行ったら、大好きな風丸くんの側にずっといられる。
ずっと隣で、彼を応援することが出来る。
どんなことよりも嬉しいはずだった。
でも、私はなぜかモヤモヤとした気持ちが渦巻く。それを理解するにはそう時間は掛からなかった。
「ごめんね…風丸くん。やっぱり私は…ここに残りたい」
断るのは、とっても心苦しい。
でも、私はここに、陸上部に残りたいと思った。
もちろん、風丸くんは大好き。
でも、陸上も大好きって言ったら、欲張りなのかな…?
「私は…陸上が大好き。それを教えてくれたのは風丸くんなの」
「……」
風丸くんは一瞬寂しそうな表情を見せた後、私をじっと見つめる。揺れる瞳にそっと微笑みながら私は言葉を紡いだ。
「寂しいよ、風丸くんがいなかったら…。でも、風丸くんが教えてくれた陸上の楽しさ…忘れたくないの…」
私なりに見つけた風丸くんと繋がっていられる方法。
それは、ずっと陸上を好きでいること。
遠回りな繋がり方なのかもしれない。でも私は、これが一番だって思っているから。
私はその道を、進んでいきたいと思うの。
「そっか…無理言ってごめんな…」
「ううん。私こそごめんね」
「じゃあさ…」
「…?」
「良かったらまた今度…試合見にきてくれないか…?」
「……うん、もちろん!」
彼と帰れる最後の道。
もうすぐで終わりを告げる。彼の陸上生活と共に。
でもそれは決して暗いものではない。
キラキラと輝いていて、明るい未来を照らしている。
「今まで…ありがとう。舞華…」
「私こそ、ありがとう…」
ぎゅっと繋がる私と彼の手。温かくて、優しくて、安心する。
最後まで離すのが惜しくて、家に着くのが惜しくて、私はゆっくり歩いた。それは彼も一緒だったみたい。
ふと空を見上げれば雲間から光の筋。どこかで七色の虹が出ている気がした。
きっと、明日は晴れる。そんな気がする。
私たちの、ココロのように―…。
私のココロ快晴
辛い気持ちも、幸せな気持ちも、全部全部彼が教えてくれた。
そんな彼が、今までも、そしてこれからもずっとずっと大好き。
キャンバスに描き出す君との恋物語は、また1つ、完成に近付いたよ―…。
end.
あの後の帰りのお話でした!!
お互い好きなんだけどそれでも叶わない、そんな恋がかけて凄く楽しかったです。
それでこそ、切なさって感じで(^^)
ここまで読んで下さりありがとうございました!!
2012.5.19
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