降り注ぐ雨粒は (4/9)
今日は、生憎の雨模様。
そのためみんなのグラウンドを駆け抜ける姿を見ることは出来ないらしい。
授業中も身が入らず、私はずっと窓の外を眺めていた。
西の空には微かに青が覗く。もう少ししたら晴れるのかもしれない。
そんなことを頭に巡らせながら垂れる雫に目を向けていた。
でも、降った雨が止むことはなかった。
私は今日、衝撃的なことを耳にすることになる。
授業後、私は教室を去ろうとする風丸くんに声をかけた。
「風丸くん…最近どうしたの…?部活来てないけど…」
「えっ…ちょっと、な…」
私のやる気を削ぎ取る原因のもう一つ。
そう、最近風丸くんは部活に姿を現さなくなった。
眉尻を下げ、風丸くんはそう私に告げる。
風丸くんが部活に姿を現さなくなったのは、円堂くんが陸上部に姿を現したあの日からだった。
あの日は、風丸くんの調子が一気に下がった日でもある。
それが原因なのか、はたまた違うことなのか。何が原因なのかはまだ分からない。でも、私は放っておくことは出来なかった。
あの日から風丸くんの様子がおかしいことは明白。しかし、「何かあったの?」と聞いても答えはいつも同じ。「何もない。」だった。
「すまない…舞華…。今日は、行くよ…」
「そ、そっか…」
その言葉を信じていつも通り私はジャージに着替え部室に向かった。
でも、部室のドアに手を掛け中に入ろうとした時。
中から聞こえた声により、私は動けなくなってしまった。
「風丸さん!それ、本当なんですか…。サッカー部に助っ人に行くことになったって…」
妙に耳に残ったその台詞に私は大きく目を見開けた。
ドア越しに聞こえる陸上部の彼らの声。空気が淀んでいるのか、その風丸くんの台詞を境に何も聞こえなくなる。
居たたまれなくなった私は、ぎゅっと唇を噛み締め目の前のドアを勢いよく開けた。
「風丸くん…今の話って…」
目に涙を浮かばせて、震える声のまま、風丸くんにそう問いた。
でも、風丸くんは俯いたまま何も言わなかった。
しかも、彼の来ている服はあのオレンジ色の服ではない。黄色と青色の服。
それは、彼はもう陸上部の部員ではないことを物語っていて。ギリッと歯軋りさせると私は思うがままに走り出した。
「春野さん!」
宮坂くんの私を呼ぶ声が聞こえたが振り返りもせず、私はひたすら走った…。
そう、彼はサッカーを選んだ。ずっとしてきた陸上をやめ、サッカー部に入ることを決めた。
その事実を受け止めることは今の私に出来るはずはなかった…。
降り注ぐ雨粒は
確かに、私の心を凍らせていった―…。
to be continued...
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