彼の心、霧模様 (3/9)
彼の言われるままにゴールラインに立ち、ストップウォッチを右手に持つ私。
彼はスタートラインで走る準備をしていた。
確かに最近風丸くんの調子はいい。徐々にそのスピードにも磨きをかけている。
今日もまたきっといい走りを見せてくれるんだろうと、さっきのことはひとまず忘れ、小さく胸を弾ませた。
ダッと走り出す瞬間に押したストップウォッチ。彼が私の前を駆け抜けると同時にもう一度それを押した。
でも、そこに刻まれるタイムを見て私は思わず顔を歪めさせる。
「下がって、る…」
そう、彼のタイムが大幅に下がっていた。普段から多少下がることはあるがこれほど下がるのは見たことがない。
風丸くんも身を挺して感じているのであろう。膝に手を置いて肩で呼吸をしていた。
そう、この日から変わり始めていた…。
彼の、陸上への想いは…。
きっと信じたくないがために、彼の想いから目を逸らしていたんだろう。
少しずつサッカーへと想いが寄っているんだって―…。
彼の心、霧模様
彼は、風丸くんは、気付いているのだろうか…。
"もしかしたら"そう思ってしまった私がいた―…。
to be continued...
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