太陽が昇りきる前 (5/5)
次の日の早朝、まだ目覚ましをセットしていない時間。俺ははしゃいでいる陽菜によって起こされた。
「蘭ちゃん!蘭ちゃん!朝だよ、起きて!」
ゆさゆさと揺らされる俺の体。どうやら布団の上から揺らされているらしい。半開きの目でゆっくりその主を見た。
「ん…今…何時?」
「6時」
「早すぎだろ…」
「えー…。拓人の家行きたくて早く起きすぎたかな…」
何となく目を開けていた俺も次第に覚めていく。いつもだったら即二度寝だし久しぶりの休みだから朝くらいゆっくりしたい。
だけど今回はちょっと違う。
今回は、陽菜がいる。
端から見たらいい迷惑なのかもしれない。でもこれは俺にとったらもう慣れていたことだった。
俺はベッドに入りながらも陽菜を見て、静かに眉を寄せた。そして上半身だけ起こさせるとゆっくり言葉を紡いだ。
「陽菜も…もうちょっと寝たらどうだ…」
「わ…私はいいよ!眠たくないし…それに早く拓人の家行きた…っ!」
俺は陽菜の言葉を途中で遮るように手を取り、強引にベッドに入れさせた。バランスを崩した陽菜は俺のベッドへと飛び込むことになる。
「いてて…何するの、蘭ちゃ…」
「隈」
「え?」
「"早く起きた"んじゃなくて本当は"寝れなかった"んだろ?時差ボケとかじゃないのか?」
陽菜と向かい合わせになるようベッドに寝転がるとそっと陽菜の頬に触れる。そしてそう言った。
近くで見れば一目瞭然。陽菜の目の下には確かに隈があった。それは寝れなかった何よりの証拠。
「うーん。やっぱり蘭ちゃんは凄いね、適わないや…」
「ははっ…」
俺がそう笑うと陽菜もふにゃりと笑って。陽菜は静かに目を閉じた。整った顔がとても綺麗。
「おや…すみ…蘭ちゃん…」
そしてよほど眠たかったのか、しばらくすると陽菜はゆっくり眠りについていった…。
「おやすみ、陽菜…」
そして俺ももう一度、深い眠りについた―…。
太陽が昇りきる前
もう一度、君と夢を見る―…。
to be continued...