太陽と、夕暮れ空 (3/5)
「へぇ…!アメリカってそうなってるんですか!」
「でねでね!」
部活終わりの帰り際。サッカー棟の中、一年は陽菜の話に夢中だった。きっと着替えてないことに気がついていないのだろう。泥だらけのユニフォームのまま陽菜の話に耳を傾けている。
「おーい!早く着替えないと閉めるぞー!」
「あ、すみませーん!陽菜さん、また後でお話聞かせてくださいね!」
「うん、もちろん!行ってらっしゃい」
一年はそうキラキラした目で陽菜に言い捨てるとこちらに向かってくる。やっぱりアメリカとなれば一年たちにとったら異世界のような場所で興味津々なんだろう。二年や三年の先輩は自重してる部分もあり、話には乗らないだけだけれど…。
着替え終えていた俺は話があることを思い出して先に陽菜の元へと行った。
「陽菜…」
「あ、蘭ちゃん!蘭ちゃんの学ラン姿、新鮮だなぁー」
相変わらず陽気な陽菜だったが俺は構わず陽菜の横の壁にもたれかかった。
「これからどうするんだ?泊まりにくるのか?」
「うん!蘭ちゃんのお母さんにはもう話は付けてあるけど、泊まらせてもらうことになってる!蘭ちゃんはそれでも大丈夫?」
「いつものことだろ?」
「うー…蘭ちゃん大好きー」
「わッ!陽菜…」
昼間同様俺に抱きついてくる陽菜。確かに慣れていることだけれどもやっぱり不意打ちはびっくりする。
何だかなぁと少し顔を赤らめさせた。
「やっぱり…なんかある」
「コラ、だから何もないって言ってるだろ」
部室のドアから顔を覗かせる狩屋は相変わらず含み笑いをしてこちらを見る。
だから何もないって何回も言ってるのに。お調子者の狩屋にはほどほど呆れる。
狩屋がスルスルーと顔を引っ込めるのを確認すると俺はハァと一つため息を吐いた。すると陽菜がこちらを覗き込むように見てきた。
「蘭ちゃーん?どうしたの?」
「え、あぁ…ごめん。何でもない」
「そっか…。あ!今日拓人とも一緒に帰っていい?」
「全然構わないけど…」
「やったぁ!」
そう答えると陽菜はピョンピョン飛び跳ねる。無邪気で、陽気で、やっぱり何も変わっていない。
でも、ただちょっと気になることがあった。
前から変わらないはずなのに、それがなんだか妙に引っかかる。
「蘭ちゃんと拓人と一緒ッ!久しぶりだなぁ…」
虚しいような悲しいような、恐ろしく空虚な気分になって、なぜかチクリと胸が痛んだ。
太陽と、夕暮れ空
もうすぐ陽は沈む。
この胸の痛みはなんだろうと、考えてしまう俺がいた―…。
to be continued...