真実を知るために (93/109)
「で…出来たァ…!」
あれから次の日。円堂くんたちにグラウンドを貸してから2日目。今日も1日フリーだった。私はそのフリーの時間を利用して完成させたものがあった。
「練習メニュー…。早くみんなに会えないかな…」
そう、完成させたのはみんなの練習メニューだった。
昨日、みんなに練習メニューを作ってくれと頼まれ私はすぐに作成に取りかかった。半田くんを除いても5人、さすがに時間は掛かったがどうやらみんなに会うまでには間に合ったみたい。私はその練習メニューを胸に抱え1人微笑んだ。
早く練習出来ないかなと胸を膨らませながらその完成した練習メニューを見ていた時、隣に置いてあった携帯が突然音を鳴らして震えだした。
着信だった。私は携帯を手に取り内容を確認した。
「あ…佐久間くんだ…!」
その着信は佐久間くんからのモノだった。
Receive Mail[001/500]
Date 20XX/OX/OX 19:36
From 佐久間次郎
Subject
今日鬼道から連絡があって、明日帝国で練習試合をすることになりそうなんだ。
俺は出られないがまた鬼道とこうしてフィールドで会えるのは嬉しいよ。
あ、そう言えば退院したぞ!
-END-
そんなメールですら嬉しくて。その連絡を受け私はさらに有頂天になった。
佐久間くんたちも無事退院出来て、尚且つ彼らがしたかった恩返しが出来る。彼らにとったらこれほど嬉しいことはきっとないだろう。早く明日にならないかなとまた感じた。
そしてそれと同時に、もしかするとその練習試合中、雷門中が空くのだったらみんなは雷門中で練習をできるかもしれない、そう察した。
だけどまずはみんなに連絡する前に円堂くんに連絡を取って確かめるべきか。そう感じた私はそのことを確かめるべく、円堂くんに連絡を取ることにした。
しかし、円堂くんの返答に私は拍子抜けてしまった。
『え、そうなのか?俺は聞いてないぞ?』
「え…っ!?」
どうやら円堂くんには伝わっていないらしい。佐久間くんが嘘をついているとは思えないし、ただ伝わりきれていないのか、もしかしたらサプライズだったか、とそう脳裏を走った。
佐久間くんは鬼道くんから連絡を受けたと言っていた。きっと鬼道くんには何か考えがあるんだろう、そう察すると私は取りあえず明日まで連絡を待つことにした。
――――――……
そして次の日、案の定昼ちょっと前くらいの時間、私は円堂くんから連絡を受けた。
『楓香の言うとおりだったよ、今から帝国で練習するんだ!だから雷門のグラウンド使っていいぞ!ありがとな!』
その円堂くんの声からして何やら楽しそうな様子。いい練習試合になればな、と思いながらも私はその円堂くんの声に耳を傾けていた。
話を終え、私は電話を切るとすぐさまみんなに連絡を取った。みんなも喜んでいるようで、口を揃えて「すぐ行くよ!」と言ってきた。
やっぱり、練習したかったんだ。みんなの台詞からはそうひしひしと伝わって来た。
「さてと…私も行こう!」
私もみんなに負けていられない。だから私も早く雷門中に行こう。そう決意した。
だけど、こんなたくさんの幸せはいつまでも続かないわけで…。あっという間にその幸せは崩れ落ちてしまった。
幸せと不幸はいつも表裏一体なのだと、この時改めて感じた―…。
ガチャンと鍵を閉め、雷門中へ向かうべく一歩を踏み出した時、私の目の前には黒の車が一台止まった。
その車を停車させた主はドアを開けて私の前に立った。
そして、とんでもない言葉を口にした…。
「朝比奈…楓香さんですね…。あのお方があなたにお話があるそうです」
「っ…!?あの…お方…?」
「さぁ…こちらへ。エイリア学園のことが分かるこの上ないチャンスですよ」
細身の緑色の髪をしたつり目の男の人は私の腕を掴み車へ促そうとする。それに恐怖を感じたが、それと比例して私の心は小さく揺るぎ始めた。
エイリア学園のことが…分かる?
ずっと疑問に感じていたことだった。彼らのことを聞くようになってから、彼らと、関わるようになってから。何かが霧のようにモヤモヤと私の中を渦巻いていた。だけどずっと気になっていても答えなんか出なかった。
でも、もし、もしここで行けばその答えが出るのかもしれない。
理屈なんてないけれども、このとき辺りからどこか確信していたんだと思う。
私は、エイリア学園と何か関係があるのだと―…。
私はこくりと頷き、その黒い車に乗り込んでいった―…。
真実を知るために
ごめんね。
ちょっと部活、遅れます…。
to be continued...
(2017.11.15)
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