試合開始のホイッスル (86/109)

【円堂視点】


ガゼルに試合を申し込まれた後、俺たちはすぐさまイナズマキャラバンでフットボールフロンティアスタジアムへ向かった。

中に入って周りを見るもまだガゼルは来ていなかった。


『雷門イレブンの諸君。我々ダイヤモンドダストはフットボールフロンティアスタジアムで待っている。来なければ黒いボールを無作為にこの東京に打ち込む』


沖縄から帰ってきた俺たちを待っていたのは宣戦布告だった。河川敷でダイヤモンドダストのキャプテン、ガゼルにそう言われ今に至る。

俺はぎりっと歯を食いしばった。そんなことは絶対に許さない。東京を、この大切な街を壊されてたまるもんか!


「相手はどんな連中か全く謎よ。どのような攻撃をしてくるかも分からない。豪炎寺くん、さっそくだけどフォワードを任せるわ」
「はい」

「豪炎寺くんは間違いなくマークされる。彼にボールを回すのも大事だけどチャンスがあればゴールを狙いなさい」
「「はい」」

絶対負けない。負けてはならないんだ。俺はそう深く決意するとぎゅっと握り拳を固めた。


「来いって言っておきながら奴ら来てないじゃないッスか」

瞳子監督の指示が終わるとふと壁山はもう一つのベンチに目を向けた。そこにはやっぱりダイヤモンドダストはいない。


「ん?この僕に恐れを成したんでしょうよ」

目金も向こう側のベンチを見て眼鏡を光らせた。ちょうどその時だった。

パッと青い光がこのスタジアム中に散らばってそこからいくつかの影が映る。そしてパラパラとたくさんの小さな氷塊が降り散るとようやくガゼル率いるダイヤモンドダスト11人が姿を現した。


「エイリア学園マスターランクチーム、ダイヤモンドダストだ」
「マスターランク…」

そう言うとガゼルは一歩前へ出た。そして手を前に突き出すとこう言葉を続けた。


「円堂、君たちに凍てつく闇の冷たさを教えてあげるよ」

「冷たいとか熱いとかなんてどうでもいい!サッカーで街や学校を壊そうなんて奴らは俺、絶対許さない」


サッカーは楽しむスポーツなんだ。サッカーで街を破壊することだけは、どうしても許せないんだ。

デザームとだって、最後は分かち合えた。だから絶対にどんな敵でも分かち合える。ゲーム終了のホイッスルが鳴ればいつだって握手ができるんだ。

俺は手のひらをしばらく見つめた後、再びぎゅっと握りしめた。


「そうそう」

「っ…?」

俺はそのガゼルの何か思い出したような声にパッと顔を上げた。するとガゼルは冷静にもゆっくり口角を上げると驚くべき言葉を発した。


「あの女、雷門のもう一人のマネージャーにもここに来るよう言った。おそらく後半くらいには来るだろう。せいぜい無様な姿を見せないよう頑張るんだな…」

「なにッ!?」

「まさかっ…楓香に…!」

そのガゼルの台詞に一番に反応したのは一之瀬だった。一之瀬は握り拳を固め一歩前に出た。

ガゼルの話によるとどうやら楓香にもこの試合のことを言ったらしい。珍しく怒りを奮い立たせる一之瀬に俺は遮るよう腕を伸ばした。


「一之瀬…あんまりムキになるな。相手の挑発かもしれない」
「円堂…」

「大丈夫だって!仮にそうだったとしても勝てばいいだけだ、だろ?」
「あ、あぁ…」

一之瀬はゆっくり平常心を取り戻すと拳に下げた。それに俺は安堵するとピッチに向かっていくガゼルたちを目で追った。

そして、このチームに勝つため俺もピッチに向かってゆっくり歩き出した―…。




試合開始のホイッスル


絶対に勝つ。

俺はゴール前に立ち、ホイッスルと同時に握り拳をもう一つの手のひらで受け止めた…。


to be continued...

いつの間にか二周年を迎えてました…。ありがとうございます。かなりのスローペースですが首を長くして待っていただければ幸いです…!すいません←

(2014.3.15)

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