消失された過去 (83/109)
気付けなかったなんて、言ってもただの言い訳にしかならないのかもしれない。
"忘れた"なんかではなくて、ただ単に"思い出せなかった"んだ―…。
彼らを、共に過ごした彼らとの時間を。
私を取り巻く周りの空気は、少しずつ、でも確かに、変わり始めていたんだ…。
第四章 start.
―――――――――……
今日は、テレビ中継であの試合が流されていた。
雷門イレブンとイプシロン改の試合が。暖かい気候、キレイな海が見える沖縄で、白熱した試合が向こうで繰り広げられている。
そんな試合に私たちは目が食い入るほど真剣な眼差しをテレビへ向けていた。
豪炎寺くんの復活。誰もが喜んだ。ここにいる、みんなは。
ここには私を含めて6人いる。そう、風丸くん、以外。
風丸くんは試合が始まる前、辛そうな表情を見せた後、試合は見ずに練習をする、と言った。「強く、なりたいから。」そう付け加えて。
きっとみんながそうなんだと思ったと思う。でも、もしかすると円堂くんたちへの拒絶、言わばエイリア学園への拒絶かもしれないと私は心の隅で思った。
だけど今回は私はそれ以上首を突っ込まないことにした。もし仮にそれが本当だったとしても、それは仕方のないことだと思っているから。いつか彼らと向き合える日を、焦らず待っていきたいと思うから。
今は無理はしなくていい、休養の時間だって時には必要。今彼はその時間というだけ。
小さく映る彼の背中を見つめながらも私はゆっくり眉尻を下げた。
試合が始まるとみんなはテレビに目を向けた。
私たちが出来ることは応援しかない。だけど私たちは必死に応援した。想いが伝わるように、精一杯。
結果は勝利。イプシロンのキャプテン、デザームという男とも分かち合えたよう。だけど、彼らに待っていたのは追放だった。それが、現実。
そしてそれと同時にまた新たに現れた新しいチーム、ダイヤモンドダスト。キャプテンであるガゼルを見た瞬間、嫌な衝撃が走った気がした。
何故だろう、背中が張り付いて動けなかった。視線を彼から離すことが出来なくて、小さく震えた。訳も分からない心の霧が妙に濃くなる。
まだ、続くんだ…。新たな敵として円堂くんたちの前に立ちはだかった彼らが何よりの証拠。
私はふと画面の隅にいる光を失った彼を見て、静かに胸を痛めた。
彼は、彼は―…。
私はぎりっと歯軋りさせると椅子から立ち上がり、彼らと共に部室を出た。
私の知らないところで、こんな話をしていたなんて知らずに―…。
消失された過去
まだ、思い出すことは出来ない―…。
「ガゼル、円堂を見たそうだね」
「面白いやつだった。あそこまで熱くなる理由が分からないけどね」
「熱いやつは好きだぜ。だが、俺の灼熱の炎には叶わないだろうさ」
「炎も氷の冷たさの前では消えるだけさ」
「やるってのか!」
「相変わらずすぐ熱くなる」
「やめたまえ2人とも」
「ガゼル、円堂と戦うつもりかい」
「あぁ、イプシロン改を鎮めた実力ってやつをこの目で見てみようと思ってね…」
刻一刻と、運命の時は近づいている―…。
to be continued...
(2014.2.1)
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