変わらない景色 (76/109)
【半田視点】
俺は河川敷にいた。あの後全力で河川敷に向かった。途中、急いで来てくれたであろうマックスに「ちょっと待ってよ!」と言われたけれど。
後ろから上のような声が聞こえて、立ち止まってマックスを待った。マックスはさらにスピードを上げて俺の隣に並ぶ。そしてひゅうひゅうと肩で呼吸した。
「一緒に行くって言ったじゃん…」
「ご、ごめん…」
急がしてしまったことに何となく申し訳なさを感じているとマックスは顔をあげる。そしてこう言葉を紡ぐ。
「マスコットも探してあげるからさ。大切なモノなんでしょ、あれ」
「マックス…」
やっぱり友とはどんなに素晴らしいんだろうと改めて実感する。よく言う、持つべきものは友って。
よく俺のことを分かってくれて、一番側で応援してくれている。それがどれだけ支えになっているか、マックスには分かるだろうか?
感謝してもしきれないくらい支えてもらっている。
俺は苦笑いするとマックスと一緒に河川敷に向かった。そして今に至る。
でも、どんなに河川敷を探しても、きっと無くなった場所であろうあのベンチの辺りを探しても、あのマスコットは見つからなかった。
「ない、な…」
「どこか他に心当たりない?」
「うーん…」
単純に家かもしれない。部室のどこかにあるだけかもしれない。だけどどこもピンと来ない。
うーんと言葉を濁すと俺は天を仰いだ。
天はもう青くなりかけている。オレンジ色はもう西の方しかない。もうすぐ太陽が沈む証だ。これ以上経てば探すには環境が悪くなる。
「マスコットはまた明日探そう…?とりあえず今日は朝比奈に謝りに行った方がいいんじゃない?」
「うん…そうだな…」
それが最善なのかもしれない。
でも決して諦めたわけではない。あのマスコットが見つからなかったのはもちろん悔しいけど、きっとこの環境の中じゃ見つからないだろう。
俺は汚れた制服のズボンをはたいて砂を落とすとベンチに置いてある鞄を手に取った。
「よし、行こう。朝比奈に謝ろ」
「うん…」
謝って、それで仲が戻るならそれに越したことはない。俺は1つふぅと深呼吸するとだんだんと付いてくる電気に目を移した。
謝ろう。それで仲直りするんだ。
俺はそう決意すると仲直りするべく一歩を踏み出した。
トクトクと高鳴る鼓動。朝比奈の家が近くなればなるほど俺の心臓はけたたましく鳴る。落ち着け、そう頭に言い聞かせながら着いた朝比奈の家。
俺はふぅとまた1つ深呼吸をして、朝比奈の家のインターホンを押そうとした。しかし、そこから動かない。あと5センチもないのに、そこから先へは進めなかった。
「うー…マックスゥ…」
『ほら早く!仲直りしたら戻ってこーい』
俺はマックスの方を向いた。マックスとの距離は5メートルほど。マックスは電信柱の裏に隠れてこちらを見ている。マックスがそこにいる理由は本人曰わく「僕いたら邪魔でしょ」と。
小さく囁かれたマックスの台詞で再び前を見る。札には【朝比奈】という字。
俺はまた、決意とともに肩の力を抜いてその勢いでインターホンを鳴らした。
ピンポーンと家の中で鳴り響くその音に自分がビクリと反応する。
だが、朝比奈が出て来ることはなかった。
もう一度鳴らしてみようか、そう頭に過ぎったので思うままにインターホンを鳴らした。
でも、やっぱり出なかった。
「っ…マックスゥ〜…」
ヤバい、俺泣きそう。
勇気を出してインターホンを二度鳴らしたものの、朝比奈が出なかった。俺はどれだけ嫌われたんだろうと虚しさで包まれた。
俺の異変に気付いたマックスは電信柱から身体を出してこちらに歩んできた。
「出ないの?もしかすると留守なのかもね。電気付いてないし…」
「留守…なのかな…」
「家にいたら普通電気は付けるでしょ」
出ないと察した瞬間、マジで嫌われてしまったのかと悲しくなった。でももう一つの可能性が出てきて何となく光は戻る。
でも完全に朝比奈が留守と決まったわけではない。真っ暗な中うずくまっているという可能性だってある。
俺は朝比奈の家を見上げると今度はため息混じりの呼吸を漏らした。
「まぁ…今日は運が悪かったってことで…また明日にしよ」
「うう…うん…」
マスコットを探すのも、朝比奈に謝るのも、また明日にしよう。そう結論を下すと俺たちは来た道を引き返していった―…。
変わらない景色
本当は、もっとうまく行けばこの道もキラキラ輝いていたのかな―…。
俺はそう思いながら地面に視線を落とした…。
to be continued...
遅くなってごめんなさいー(泣)
頑張れ、半田。←
2013.7.20
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