噛み締めた唇 (74/109)

【マックス視点】


これは非常にヤバいと思った。

え、もう僕視点だからだいたい予想がついてるって?

ごめんごめん。だけど僕視点じゃないと成り立たないかなって…ごめんそろそろ自重する。


早朝、部活が始まるにはまだ早いこの時間。僕は今、部室に向かっているところだった。だけど、部室が見えた瞬間、瞬時に上記のことを思った。

本当に大変な状態である。


まさか、部室の外にまで陰気臭さ(恐らく半田)がにじみ出ているとは…。

俺は中の様子を半ば察しながらも部室のドアを開けた。案の定という感じである。


「逝ってるねぇ…半田」

「………」


ヤバい。これはヤバい。もうピクリとも動かなくなってしまった。

魂が出て行くどころか霊が乗り移ったような。本当に酷い顔だ。


「二度あることは三度ある、ってね…」

僕はあきれ混じりのため息を吐くとまた半田の前の席に座った。


「もう見飽きたよ、半田。今日はなに、この前の金曜ロードショーでやってた顔なし?」

「………」


「もーさー何やってんの半田ァ…いい加減にしないと風丸に取られるよ、ホント」

「…っ……マックス〜…」


あ、何か刺激させるようなことを言ってしまったのかもしれない。

池のように涙が溜まっている机からようやく半田は顔を上げた。


「今回はどうしたの」

「朝比奈と…喧嘩した」

「何でまた」

「俺が酷いこと言った…」

「あー…朝比奈に謝りに行かなきゃね」

「うん……」


どうやら今回は朝比奈と喧嘩してしまったらしい。穏やかな朝比奈が喧嘩するとは思えないが、半田がこんな状態ということは恐らく本当のことなんだろう。

どんな言葉を言ったのか気になるところだが、傷をえぐるような気がするので止めておく。


今までは直接朝比奈と関わらないことだったけれど、今回は直接朝比奈と関わること。だからこんなにも傷が深いんだろう。

半田って意外とガラスのハート?


そんなことはどうでもいいかと一度そのことを頭から離すと僕はもう一度半田を見た。



「仕方ないやつだね、朝比奈が来たら一緒に謝りにいこっか。遅くなれば謝りにくくなるだろうし」

「うん…」



しばらくしてみんなの登場を待っていた時、ようやく1人目の部員がこの部室に姿を現した。



「おはよう。今日も早いんだな、お前ら」

「おー風丸。おはよう」

「おう、おはようマックス。…半田は…どうした?」

「ははっ…ちょっと訳ありでね…」


僕の次にやってきたのはそう、風丸だった。どうやら今日は朝比奈と一緒ではなかったらしい。風丸には悪いがちょっと安堵した。ここで一緒だったら…さ…。


「そう言えば…朝比奈も元気なさそうだったな…」

「はは…そう、なんだ…」


やっぱり朝比奈も元気ないんだ。そう納得した僕だったが、次なる疑問が浮かぶ。


なんで風丸が知ってるんだろう。まさか今日も一緒に来て、気まずいから部室に来てないだけとか?
あり得る気がする。

疑問が頭を渦巻く中、次の風丸の台詞を聞いて目を見開けた。


「半田が関係してるかは分からないけど…今日、朝比奈休むってさ…」

「っ…!」


着替えながらさらりと言った風丸の台詞に半田は大きく目を見開けた。

あーあ。やっちゃったね、半田…。


僕は同情込みの眼差しで半田をちらりと見た…。




噛み締めた唇


今、半田はどんな気持ちなのかな…。

僕はどうするべきかと小さなため息をついた―…。


to be continued...

お久しぶりです…。マックス視点は結構好きだったり(笑)
ではもう1話、どうぞ!

2013.6.28

[bkm]

 [prev]│[next

 (back)



×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -