切れた鎖に縋りついて (72/109)
【半田視点】
今日も俺は河川敷に残って必殺技の練習をした。何回やっても上手くいかない。でも俺は諦めなかった。
「あっ…おしい…!」
「っ…ハァハァ…」
絶対にローリングキックを完成させるって決めたから。
こうやって朝比奈が見守ってくれる中、諦めるわけにはいかないんだ。
「っ…もう一回…!」
俺はひたすら続けた。朝比奈と、嬉しさを分かち合う日を夢見て…。
――――――……
「ごめん…今日も、出来なかった」
「ううん、半田くんが謝る必要はないよ…。また明日も頑張ろう」
そんなこんなで今日も結局出来ず終い。やっぱり1日やそこらでは出来ないみたい。根気よく明日も頑張ろう、そう夕日を見ながら俺は明日の練習の方法を考えていた。
でも、それから何日間か練習を続けてもなかなか完成させることは出来なかった。
何かが欠けている。成功するには何かが足りない。だが、そんなことは分かるはずがなかった。
夕日に照らされて今日も朝比奈とベンチに座る。
なんで完成出来ないんだろう。いい線までは行っている気がするのに。なぜ、なぜ。
俺は持っている自分専用のボールを見つめる。それでも、やっぱり方法なんて分かるはずもなかったんだ。
「どうして…出来ないんだっ…」
「半田くん…」
分からない。何がいけないのかも、何が足りないのかも。分からない。完成図が違うのかもしれない、根本的なことから違うのかもしれない。
考えれば考えるほど頭はぐちゃぐちゃして泥沼化していく。
これから練習していっても完成することはあるのだろうか。今となってはそんな感情が溢れ出す。
絶対完成させると強く誓ったはずなのに。完成させなければならないのに。今の俺には完成させられる自信がなくなっていた。ここまで来ての自信消失はかなり精神的にくる。
諦めちゃダメだ。そう何度も頭に言い聞かせた。もう一度立ち上がるために。そして完成させるために。
でもどうしても自信が持てなくて、どうしたらいいか分からなくなった時。
俺の耳にはさらに追い討ちをかけられるような台詞が飛び込んできた。
悔しかった。その声を聞いて。頭の中が真っ白になって、平常心を失った。自我を失って、奮い立つ怒りを抑えきれなかったんだ…。
「風丸くんなら…」
風丸、くん…?
どうしてここでアイツの名前が出てくるんだよ。
今いるのは俺だろ?
今は俺の必殺技の練習だろ?
どうして、どうして朝比奈は風丸の名前を出すんだよ。
悔しい。今映っているのはやっぱり俺じゃなくて、風丸なんだ。
朝比奈には、風丸しか映っていないんだ…。
怒りで拳が震えた。何もできない俺に。朝比奈の一番になれない悔しさに歯噛みした。
俺じゃ、一番に、なれない…。
そう思えば思うほど頭に血の気が昇った。実感した、やっぱり、自惚れていただけなんだって。
「半田くん…?」
頑張って震えそうな唇を止めた。喉から出そうな台詞も止めた。
だけど、だけどやっぱり耐えきれなかった。
俺が、俺が自らの手で、彼女を傷付けてしまったんだ―…。
「どうして…風丸風丸って…」
「え…?」
「風丸風丸って…そんなに風丸が好きなのかよ!だったらなんで俺の練習になんかに付き合うんだよ…!……っ…そんなの…俺が…っ…」
期待して、自惚れるだけじゃん…。
「っ…」
俺はギリッと歯軋りさせると隣にあった鞄を手に持ち一目散に走っていった。
俺は大切なやつを傷付けた。言葉という凶器で。
そんなのは分かってた。単なる八つ当たりだったってことくらい。
バカ。俺は大バカヤローだ。
ごめん、ごめん…。
俺は階段を駆け登っていき、大切な、愛しい奴を1人残して河川敷を去った―…。
切れた鎖に縋りついて
結局俺は、いつまでも幼いままだったんだ―…。
最後に映った朝比奈の姿は、酷く遠く感じた…。
to be continued...
久々の更新で申し訳ありません…!!
膨らませて膨らませて最後にパーンって風船が割れるような。そんな感じをイメージして執筆していました!!
すっごく楽しかったです(*´`*)
そしてこれも挿し絵があったり…。夕方の河川敷で練習している半田くんのイラストです。
このサイトの隅々を見て下さった方はきっと見たことがあるんではないでしょうか。
随分前に描いた奴なんです!!
このころはまだ長編として執筆していなく(まだ正式にイナイレを取り扱っていなく)、頭で妄想していた頃です←
この頃からこの場面は決まっていたんですね(`・ω・)b!!←
ひたすらローリングキックの練習をしているはずなんで、ちょっと違いますがこんな感じのイメージです!!
意外と気に入ってて…本当に執筆したくて…
ほんっっとうに執筆してて楽しかったです!!
2013.6.4
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