いつかの幸せな日々 (71/109)
【半田視点】
俺は、舞い上がっていた。
いや、引かれるなんて重々承知してるし、それでも嬉しさは抑えきれなかったのだ。
確かにカッコ悪い姿を朝比奈に見られてしまって恥ずかしい思いはあったのだが、やっぱり怪我などは隠しきれないらしい。いとも簡単に俺の異変に気付いた朝比奈は俺の足首を手当てしてくれた。
治療を終え、俺ににこりと微笑みかけてきた朝比奈を見て、抑えていた思い、朝比奈への恋心がみるみるうちに湧き上がってきた。目を合わせられなくなった俺はふいと逸らしてしまったけれど。
思わずこぼしてしまいそうな笑みを抑え、朝比奈と交わした1つの約束。
絶対に、必殺技を完成してみせる。
俺は再びそう深く誓った―…。
ちらりと隣に座る朝比奈を見てみれば天を仰いで柔らかい笑みを浮かべていた。その横顔にぼーっと見とれていると、朝比奈は俺の視線に気付いたのかこちらを向いた。
「半田くん」
「は…はいぃッ!」
やっちまった。動揺しすぎて変な声が出た。身体は若干仰け反っている。
それに朝比奈は目を見開けて驚いていたが、パチパチと何度か瞬きさせると次はクスクスと笑い出した。
「わ…笑うなッ…!ちょっと…変な、声が出た…だけ…」
「ごめんごめん…私も驚いちゃって…」
「っー……はぁ…」
俺は膝に肘を付けて両手で頭を抱えた。なんて恥ずかしい。
羞恥心にまみれる俺を余所に朝比奈はハハハと笑うと収まったのか大きな深呼吸をして声を張った。
「半田くん、明日も練習、してく…?」
いつも通りの優しい笑みにだんだんと戻ってきた平常心に沿って俺は言葉を紡いだ。
「あ…あぁ…。そのつもりだけど…」
「そっかっ!じゃあ私も手伝う!」
キュンって一瞬胸が高鳴った。うん、今日の俺おかしい。
羞恥心が募れば、嬉しさも募る。今日は感情がいろいろと忙しいみたい。
それにまたそっぽを向くといつもは言えない言葉をようやく口にした。
「あり、がとう…宜しく…」
「……っ…うん!」
明日が楽しみになった。また1つ朝比奈に近付けた。
これほど嬉しいことは何だか久しぶりな気がする。
ありがとう、俺、頑張るから―…。
強くなると決意した俺は、静かに朝比奈の横で拳を強く握りしめた―…。
いつかの幸せな日々
この幸せを、胸に噛み締めて―…。
to be continued...
ギリギリ月二更新…!!
先日、二度目の部活引退をし、本格的に受験モードに入ります…。
今でも遅いですが更に不定期になると思います…(泣)
閉鎖にはしたくないので時々更新していきますが遅いと思います…ご了承ください!
2013.4.29
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