私と彼と約束と。 (70/109)
「バイバーイ!また明日」
ぞろぞろとみんなは部室を去っていく。今日の練習は終わった。日は西に傾いていて、もうオレンジ色が目立ってきていた。
私は最後の仕事をすべく1人部室に残った。
暗くなり始めるにはまだ早い。もっと遅い時は誰かが一緒に残って一緒に帰ってくれる。本当に優しい。でも今日はまだ比較的明るいということで1人残っていたというわけ。
残っていた仕事も終え、鍵を返して後は家に帰るだけ。仕事を終えた私は雷門中から家に向かって歩き出した。
駅を越え、家まであと数十メートル。オレンジ色に染まる川を見ながら河川敷の側を歩いていた時だった。
「ローリング…キック!」
地を駆ける足音と共に聞き覚えのある声。カァンというボールがゴールポストに当たり跳ね返ってくる音が続いて聞こえてきた。
「っ…まだまだッ…!」
そんな声と共に聞こえたのはまた規則性のある足音。ここからではまだ誰かは見えない。ある1人の人物を頭に思い浮かべると、私はゆっくり動かしていた足を速く動かした。
見えたのはゴールに向かって走っていく1つの影。その影はボールを高く蹴り上げると自分も飛び上がり身体を反転させた。
「ローリングキッ……!」
その瞬間、ぱっとかち合うその視線。一瞬時が止まったかのように思えた時間はあっという間に消えた。
「うわッ!」
しかし、その彼は私に気付き驚いたのか宙でバランスを崩した。そしてそのまま地面に叩きつけられることになった。
反射的にぎゅっと瞑った目を恐る恐る開けると、地に仰向けになって倒れている彼を見て、私は急いで階段を駆け下りた。
「半田くんっ…!」
「っ……てぇ…」
上半身だけ起きあがらせる半田くんはどうやら尻餅をついたようで顔を引きつらせていた。
「大丈夫…?」
「っ…あぁ…」
「手当て…しよっか」
「だ、大丈夫!尻餅ついただけだから!」
「嘘。足、捻ってるんでしょ…」
「えっ…」
「とりあえずベンチ…行こっか。手当てするから!」
半ば無理やり(もちろん足に負担をかけないように!)半田くんをベンチに連れて行かせると私は捻ったであろう足を手当てしていった。
「っ…!」
「ほら…痛いんじゃない…。嘘はダメだよ、ねっ」
一瞬顔を強ばらせた半田くんを見て確信する思い。先ほど押さえた部分に湿布を貼って固定すると私はにこりと微笑みかけた。
そっぽ向いたのはきっと一種の照れ隠し。そう思った私は静かに頬を緩ませた。
「カッコ悪いとこ…見せちゃったな…」
「ううん、そんなことないよ。とってもカッコ良かった。強くなりたいんだなぁってすっごく伝わった!」
「朝比奈…」
「だから…私も手伝いたい…」
「えっ…?」
そう、あの瞬間、一瞬だったけど半田くんはとても輝いているように見えて。一瞬見とれてしまう私がいた。
練習の時言っていたこと。強くなりたい。それを叶えるために半田くんは部活後もこうして練習している。それを知った私はなんだか凄く嬉しさが混みあがってきて。私も力になりたいという思いが募ってきた。
彼がより一層強くなるために、マネージャーでもきっと出来ることはあるはず。力になりたい。
「ダメ…かな…?」
「っ…!いや、全然いい!むしろその…手伝って…もらい…たい…」
「ホント!?ありがとうっ!」
私はパァッと笑みを浮かべると静かに半田くんに微笑みかけた。
「絶対、マックス達…驚かせようね…!」
「あ、あぁ!」
こうして突然出来た1つの約束。でも力になれると思うと嬉しさを隠しきることが出来なかった。
私はぱっと山に沈みかけている太陽を見て、ポツリと小さく囁いた。
絶対、絶対、完成させようね―…。
私と彼と約束と。
また1つ、新しい一歩を踏み出した―…。
to be continued...
半田くんパート突入ですよ!!
ようやく彼の頑張りどころが((
という具合で頑張ります!!では!!
2013.4.4
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