不器用な彼の言葉 (67/109)
【マックス視点】
「おっはよー!」
朝日が煌めく早朝。
昨日と同じように声を張り、同じように僕は部室のドアを開けた。
何でだろうね。そこにはまた昨日とおんなじ光景があった。
「陰気くさいって半田!淀みすぎだよ!」
真ん中にある机を中心に青黒い空気が渦巻く。
僕は昨日と同様、部室にある窓に手をかけ、今度はそれを全開にした。
昨日は途中で止めたけれども今日は構っていられない。昨日よりも部室の陰気臭さは濃くて、半田もかなりの重症モノだった。
ピクピクと微妙に動く半田の顔を見てひらめいたことが1つ。
「今日はアレだね、ムンクの叫び。ムンクにそっくりだよ半田。ほらこの前の美術の教科書に乗ってたアレ」
何というかコレも一種の励まし、といったらちょっと違うのかもしれないけど、とりあえず元気付けようとそう言ったのに。なかなか半田の表情は昨日のようには元に戻らない。まだムンクの叫びの顔のままだった。
「そりゃあ…酷い…な…。はははは…」
もう完全に逝ってしまってる様子である。
「おーい、戻ってこーい半田ー!」
思うがままの台詞を口にした僕。でもやっぱり半田に変化はない。
朝比奈と何かあったのは明白。本当に世話の焼ける奴だなぁなんて思ったけど、僕は半田の前の椅子を引き、そこに座った。
僕は1つため息を吐いて、頬杖をついて言葉を紡いだ。
「朝比奈とまた何かあったんでしょ。今度は何ー?」
「はは…はっ…。分かる…?」
じゃなきゃこうならないだろうからね。つくづく半田はわかりやすいやつだと思う。
「うん。だろうと思った。振られた?」
「振られてないッ…!だけど…」
遊び半分で言った台詞に過剰反応した半田は涙目になりながらそう言うが、その次の言葉を詰まらせた。
何か言いづらいことなのだろうか。躊躇う様子を見せた半田だったが、意を決して僕の目を真っ直ぐ見据えた。
「昨日も…朝比奈が…風丸に話があるって…。しかもちょっと躊躇ってる感じで…」
「うーん…。それが告白だと思う、と」
「うん…」
半田曰わく、朝比奈が告白するために風丸を呼んだ、と。
確かに昨日、部室を出たとき、そこには朝比奈がいた。ドアが開いたことにより朝比奈は顔をパッと上げて、僕たちだと分かるとゆっくり笑みを浮かべた。
今思い出してみれば、確かに朝比奈が誰かを待っていたと言ってもおかしくなかったと思う。
それが、風丸だった、ということなんだろう。
かなりのダメージを負った半田はそれきり黙ってしまう。
何だかなぁ、と呆れ混じりに1つため息を吐くと半田は「な、なんだよ…」とまた涙目で言う。
それにクスッと笑いが込み上げてきたが、なんとか抑え僕は続けて言った。
「いや…半田ってバカだなぁって」
「なっ…!」
本当に、バカ。
半田は周りに目が行き過ぎて大切なことに気付けていないんだから。
「いーい?僕からしたらね、ここ最近すっごく朝比奈に近づけてると思うんだ、半田」
「でも…」
「ほら出た!ネガティブ半田。確かに最近風丸と朝比奈の仲が良くなったとは思うけどさ、なんか…違うというか…」
「なんか…違う…?」
「うーん…上手く言えないんだけどさ…。とりあえず、半田は自信を持つことから始めなよ、後ろ向きすぎ」
「う…。じ、自信…」
単刀直入すぎたかな、なんて思ったが今の半田にはこれくらいがちょうどいいはず。半田はちょっと目を細めるとぎゅっと拳を固めてそれをじっと見つめた。
何を考えているかは分からないが、半田はキッと眉を上げると天を仰いだ。
「ん…。マックス…」
「なーにー」
「あり…ありがとう…」
不器用な彼の言葉
それが彼の精一杯なのかもしれないけど、ちょっとずつ前に進めてるのなら、許してあげようかな―…。
to be continued...
1ヶ月以上も更新しないなんて…!!
私は…くっ…!!←
本当に遅くなって申し訳ありません。スランプだなんてただの言い訳です、頑張ります。
2013.3.15
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