俺から君への恩返し (64/109)
【風丸視点】
「おつかれー」
「おぉ、おつかれー!」
そんなような言葉を交わし今日の部活は終了した。
部室に向かおうとする俺だったが、1人動く気配もなくその場に佇んでいる奴を見て俺は立ち止まった。
「どうした朝比奈…?」
「風丸くん…っ。ううん、何でもないよ」
そこに佇んでいたのはそう、朝比奈だった。朝一緒に来たときは比較的元気だったのだが、練習中は何故だか元気がなかった。
どうしたんだろうか。そうずっと気になって、練習中朝比奈を見ていたものの、どうしても目が合うことはなかった。
だって、朝比奈の視線の先を辿ればいつだって半田がいたから。
朝比奈の目には俺ではなく、半田が映っているから。
その事実に何となく、ある疑問がだんだんと確信に変わっていく。それと同時に俺の中の何かがくすぶられるようにモヤモヤとした気がした。
それでもやっぱり、俺は見放せなかったんだ…。
俺を助けてくれた朝比奈を。俺に帰る場所を作ってくれた朝比奈を。支えてくれた、朝比奈を…。
「そっか…、何かあったらいつでも相談してくれよ」
「…うん。ありがとう風丸くん」
せめてを、と思って俺はそう言った。
"いつでも相談に乗る"
それが朝比奈への恩返しになるのなら。
とりあえず俺は着替えるべく部室に向かった。少し遅れていた俺は駆け足でみんなの背中を追いかけた。
着替え終われば終わった者から部室を出て行く。マックス達は比較的早く着替え終わったようで「また明日ー」と元気のいい声で部室を去っていった。
静まり返った部室には2人、俺と半田が残っていた。半田は何故かのんびりと着替えている。というよりも半田も元気がないみたいだった。
特別会話が弾むことなく淡々と着替えていると外から「あ、また明日ねー」とマックスの声が聞こえてきた。
どうやら外には朝比奈がいるらしい。それに半田も気付いているかは知らないが、ちょっと顔が歪んだ気がした。
半田がカッターシャツを着ていると、俺は着替え終わり先にお暇させてもらうことにした。
ガチャリとドアを開けて俺は目を見開けた。そこには朝比奈が誰かを待つように隅にいたから。おずおずとする朝比奈を見て、パタリと扉を閉めるとゆっくり朝比奈に近付いた。
「風丸くん…」
「どうした?」
それでも朝比奈は何も言わずもじもじと身体を丸めて俺を見る。そしてパッと視線が交わると朝比奈はゆっくり言葉を紡いだ。
「お話があるんだけど…いいかな?」
まるで告白前みたいな感じだが、俺はそんなんじゃないって知ってる。朝比奈が言いたいことはだいたい予想がつく。
「あぁ…」
威勢のいい声で返事をするとゆっくり俺たちは肩を並べた―…。
行く場所は決まってる。
言わずもがなお互いがどこへ行くのかは知っているだろう。
俺から君への恩返し
君が俺を助けてくれたように、俺も君の助け舟になりたいんだ―…。
to be continued...
風丸がちょっと来てますね(笑)
ちょっと風丸頑張ります、
ではでは次ももう少しお待ちください…。
2013.1.13
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