虚しい事実と夕暮れ空 (63/109)



顔を洗いに行くと言った半田くんを追いかけた私。様子がおかしかったなんて一目見れば分かった。

心配に思いながらもタオルを差し出しながら様子を伺うとなぜか半田くんの口から風丸くんの名前が飛び出した。

2人の中で何かあったのだろうか。理由としてそんなことが考えられたが先ほどの様子から、半田くんと風丸くんの中で何かあったとは考え難い。


さらに疑問符を浮かべるとそれに続き半田くんはもう一人の人物を口にした。


"アイツ"

代名詞な分、半田くんは誰を思ってアイツと呼んだかははっきり言って分からない。

深く切り込むことも出来ず、疑問符ばかりを頭に浮かべていると半田くんは顔を拭いていた手を止め、一時ピタッと止まると私と目が合った。


またまた何かと思えば、半田くんは物凄い勢いで私の前を駆けていく。

やっぱり何か様子がおかしい。そう思った。


心配になりながらも半田くんの背中を見つめていると気のせいかもしれないが半田くんが止まったように見えた。その背中が何を伝えようとしているのか理解出来ぬまま、再び駆け出す半田くんの姿は静かに消えていった。


「なん、だったんだろう…」


ゆっくり首を傾げた私も再び部室に向かうべく一歩足を踏み出した。



部室に戻ればすぐに部活は開始される。

いつも通り、いつも通りのマネージャーをこなしながらもちらりと半田くんを見た。やっぱりいつ見てもどこか浮かない顔。

きっとまた、半田くんを追い詰める何かがあるんだろう。

だけど、私はなぜか聞く勇気を持てなかった。

半田くんは苦しんでいるのに、悩みを聞かなきゃいけないはずなのに、どこか半田くんから"聞くな"と言われているようで。私はこれ以上踏み込むことが出来ないでいた。


夕方、部活は終わった。私は思い切って半田くんに話しかけようと試みたが、目が合った瞬間逸らされそのままスタスタと部室に向かってしまった。いわゆる避けられているということ。

その事実を知った私は何ともいえない虚しさで包まれ、どうすることも出来なかった。



「どうした朝比奈…?」

「風丸くん…っ。ううん、何でもないよ」


「そっか…、何かあったらいつでも相談してくれよ」

「…うん。ありがとう風丸くん」


そんな私の異変に気付いたのか風丸くんは私にそう問いてきた。私は何でもないと告げたが、きっと本当は分かっていたんだろう。深く聞き込まず、いつでも相談に乗ると言ってくれた風丸くんに感謝しながらも部室に向かう彼に体の横で小さく手を振った。


でも、彼らの姿がいなくなった後も、私はただ1人ずっとグラウンドで佇んでいた…。




虚しい事実と夕暮れ空


真っ赤に染まる夕暮れ空を見て、このまま1人で抱え込めるのか、どうしようもなく不安が募った―…。


to be continued...

ちょっと…な雰囲気が出てきましたね!!
さてさて、頑張らなければ…

2013.1.13

[bkm]

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