言えなかった言葉 (62/109)
【半田視点】
早朝、俺は職員室に部室の鍵を取りに行った後、こうして真ん中の机で顔を突っ伏していた。
昨夜の俺の寝つきは最悪で。全然眠れなくて結局ズルズルと2時、3時と時間が過ぎていった。
今こうして顔を突っ伏している理由は眠たさもあるのだが昨日のことがずっと頭から離れないことが大半だと思う。
分かってる。何度も同じ想いをしたから。何度も何度も舞い上がっては沈んでる。そんな繰り返しでもやっぱりいつもと結果は同じ。いい加減直したいことだった。
マックスにモアイ像みたいな顔と言われて。もちろんショックじゃないことはないけれども、俺はそれ以上に気持ちが沈んでいた。
マックスが来て、話を聞いてくれたおかげでなんとか気の沈みは最低限で抑えることは出来たけれども。
でもその後、風丸に続き朝比奈までもが突然登場したことに関しては動揺を隠せるはずもなかった。
「か…顔洗ってくる!」
そう言って俺はまた逃げるように部室を去ると手洗い場に向かった。
顔を洗って気持ちを落ち着かせよう。そう試みて俺は蛇口を捻り水を出して顔にかけた。
ひんやりと冷たい水が先ほどまで出ていた汗を洗い流してくれる。手に水を溜めるとキラキラと太陽で輝く。
どれもキレイで気持ちが良いことだが、いまいち俺の心には響いてくれなかった。
それもこれも全て、俺の心情の空虚さが影響してるんだろう。そんなことは考えなくてもすぐに分かった。
「はい、タオル」
「ん…。ありがと」
俺は顔を洗い終えると横から伸びてきたタオルを手に取り顔を拭いた。柔らかくて柔軟剤のいい匂いがする。
「今日、何かあったの?」
「んー…。最近さ、何かいろいろおかしくて…」
「何が?」
「えと…風丸とアイ…」
……あれ?
ちょっと待って。
なんか会話が成立してるんだけど。おかしい。俺、今1人だよね?
あれ、じゃあなんでタオル…。
目をパチパチさせて声のするほうを見るも誰かがそこにいたのは言うまでもない。
俺はその人物を見た時、悲しさと虚しさのあまり絶句しそうになってしまった。
募る想いは、後悔、羞恥心、そんなものばかりだった。
「…っ…!朝比奈……」
「半田くん?」
どうしようもなく恥ずかしかった。言ってしまった後悔と虚しさがどんどん沸き上がってくる。顔を紅潮させうろたえる俺に出来ることはただ一つ。
「えと…あと……何でもないッ!」
一目散に仮部室目掛けて駆けていった。でも俺はあることを思い出してピタッと止まった。
「タオル…あ、ありがと…」
再び赤面させながらもそう言葉を紡ぐと俺はまたゆっくりスピードを上げていった…。
言えなかった言葉
心配してくれて、ありがとう。
俺は後から言い忘れたことを思い出して、ちょっぴり振り返りそうになった―…。
to be continued...
なんなんだって感じの話ですね(笑)
とりあえずポケモンでいう逃げ足って特性のようです、彼は。
何かあったら逃げる、私のせいでそんなキャラがついてなければいいんですが!!
ではでは、大きな幕に向けて頑張ります!!
2012.12.16
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