僕から君へのエール (61/109)
【マックス視点】
「おっはよー」
早朝。
僕はきっと今日も一番なんだろうなと思いながらそんな言葉を発し、新しい部室のドアを開けた。けどまあ開けてびっくり。
僕よりも先着がいたから。いつもは僕が一番なのになぁと口を尖らせると、中の異常な雰囲気にまた目を見開けた。
「はは…おはよ…う…」
目の前に広がる重苦しいほど淀んだ空気。真ん中の机に顔を突っ伏している奴を中心に青黒い空気が渦巻いている。
「陰気くさい!陰気くさい半田!…どうしたのさ」
そう、中心から陰気くさい雰囲気を出していたのは半田だ。昨日まではこんなんじゃなかったはずなんだけどなぁと僕は首を傾げながらもわざとらしく慌ただしい素振りで窓を開けた。
窓に手を掛けて呆れ呆れ振り返り半田を見てみるがやっぱり、魂抜けてる。
これじゃあ半田の魂まで迷子になっちゃうか、とははっと乾いた笑い声をあげると半田の元まで行った。そして半田の前の椅子に座り、肘を付いてじっと見つめた。
「ぷぷ…半田の顔、この前の国語の教科書に載ってたモアイ像みたい」
「はは…あは…モアイ、像…か…」
それでも半田はあんまり反応を示してくれなかった。それにしても本当に酷い顔だ。何があったらこんな顔になるんだろう。
「それで…何があったの」
「はは…うん…」
やっとちょっとはマシな表情をしたと思うと半田は再び突っ伏すように机に顔を向けるとゆっくり唇をこじ開けた。
「昨日さ…風丸と、2人きりでさ…」
「半田が?」
「ち、違う!……朝比奈と…風丸が…」
「ふぅん…結局一緒に帰れなかったってことか…」
「うん…」
昨日の帰り際、あれから僕たちは少しでも半田にチャンスを、ということでさっさとその場を去った。まぁ勇気を出したのは半田だし、よっぽど頑張って言ったことなんだろうと思う。半田にとっては。
「きっと…風丸の話聞くためなんだろうって分かってるんだけど…。実は、抱き合ってるとこ…昨日見ちゃったし…」
あらま。それは重症なはずだね。
はははと乾いた声を漏らすとまた半田は「うー…」と変な声を出した。
「好き、なのかな…風丸も…」
かなりのネガティブ思考な半田はそう小さく呟くと黙り込んでしまった。僕はそれに眉尻を下げながらハァとため息を吐いた。
するとその時。
「これが仮の部室か。あ、おはよう」
ガチャンと扉が開きそこからさっきまで話をしていた風丸が姿を現した。
「ん?どうした?」
「あ…えと……」
チラリと横目で半田を見てみるといつの間にか突っ伏していた顔は上がっていて。何とも言えぬ顔をしている。
噂というものは本当に怖いものだなって実感した。
「おはよう!みんな早いね!」
そして風丸の登場と共に聞き慣れた声、朝比奈の声もした。風丸の後ろからひょいと顔を覗かせている。
また半田を見てみればプルプルと身体を震わせていて、かなり動揺しているみたいだった。引きつった顔はいつまでも直らない。
風丸の話をしているときに風丸の登場はさすがにキツいか。朝比奈もいるし。
イコール一緒に来たということを察せればたまったものじゃないだろう。
はははとその場を軽く受け流そうとすると半田は何故か立ち上がった。
そして走り出した。え?
「半田ー?」
「か…顔洗ってくる!」
またきた。なんて僕はもう慣れてきたそんな半田を見送りながら手を振った。
僕から君へのエール
まあ、少しずつ頑張ってよ。半田。
to be continued...
マックス視点です!!
とりあえずネタばっかです。?
ごめんね、モアイ像だなんて…
ただのネタです、半田くん好きさん本当にスミマセンでした。私もだけど!!
ちょっとずつ動き出しているアンダンテ…これからも頑張っていきます!!
2012.12.16
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