幸せを噛みしめて (58/109)
「あ、朝比奈。もう話は大丈夫なの?」
「うん…。ごめんね、待っててくれてたの?」
「まぁね。僕たちも手伝うよ」
風丸くんと一旦話を終え、まだ仕事が残っていたことを思い出した私は「またゆっくり話は聞くから待ってて」とだけ言うとこの部室に向かった。
近付いていけばまだ部室は明かりが付いていて。疑問に思いながらも私はドアを開けた。
そこにはまだみんなが残っていた。話を聞く限りでは私の手伝いをしてくれるために残っていたという。
その話を聞いたときは思わず目頭が熱くなってしまったけれど、早く済ましてしまおうと片付けに取りかかった。
6人ともなればこの仕事はあっという間である。10分もしないうちに片付けを済ましてしまうと私たちは部室から出た。
「あ、鍵返さなきゃ…。私返してくるね」
「あ、待って。お、俺も行く!」
鍵を閉めた後、私はみんなにそう告げて去ろうとすると、半田くんがそう言葉を紡いだ。
ピクッと動きを止めて後ろを振り返ると、半田くんはゆっくりこちらに近付いてきた。
「ふーん。じゃあ宜しくね!朝比奈、半田!」
マックスが意味ありげに含み笑いをすると、みんなは「行こ行こー」と言いながら沃さと去ってしまった。
その光景にハテナを浮かべながら半田くんを見てみると分かっていないのは私だけだと察した。
なんだか少し悲しい感情に浸りながらも私は半田くんに「行こ!」と言った。
「みんな…凄い楽しそうだったね!」
「あぁ…!久しぶりでさ、すっげぇ楽しかった!」
「そっか…。私もなんか嬉しいなぁ…」
持っていた部室の鍵でチャランと音を鳴らしながら私はそうゆっくり言葉を紡いだ。
まだ未完成ながらも随分と完成に近付いている雷門中を進みながらそんな他愛もない会話を交わす。
おそらく職員室であろう場所に足を踏み入れるといつもの場所に鍵を置いた。
これで、私の仕事は終わりを告げる。
「ありがとう半田くん!」
「いや…別に…。そんな大したこと…」
頭の後ろに手をやる半田くんを細目で見ながら私はゆっくり微笑んだ。
きっと1人でやらせるのはダメだと半田くんは気を遣ってくれたんだろう。その思いに感謝しつつも私は帰るべく一歩を踏み出した。
もう日は完全にオレンジと化している。水色のブルーシート越しからでも分かるくらい綺麗なオレンジ色。
雷門中から出れば目を奪われてしまいそうなくらい綺麗な夕日を目にすると、私はもう一度半田くんに笑いかけた。
「今日はありがとう!じゃあ…風丸くん待たせてるからもう行くね」
もし風丸くんを待たせていないのなら一緒に帰りたかったけれど、話を聞くと言って風丸くんを待たせている。
ただでさえ片付けで遅くなってしまっているのにこれ以上待たせるわけにはいかない。
「あ…ああ。じゃあまた明日な」
「うん!またね!」
私はそう半田くんに告げるとひらりと手を振って走っていった。
優しいみんなに囲まれて本当に私は幸せ者だなぁと感慨深くなりながらふふっと笑いオレンジの土を踏みしめていった…。
幸せを噛みしめて
私はもう一人の彼の元へと向かった―…。
to be continued...
ひ、久々です(´;ω;`)
若干放置申し訳ない…!!
半田くんちょっと悲しいです、すみません。
ではでは、もう1話!
2012.11.1
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