あの背中を夢見て (55/109)
【風丸視点】
揺れる電車の中、俺はアイツに電話をかけた。キャラバンを降りたことを報告するために。
電話に出たときのアイツの声は初めの方は明るかった。
でも
「ごめん…。俺、キャラバン降りたんだ…」
そう報告するとみるみるうちに朝比奈の声のトーンが下がっていった。
電話越しでも分かるくらい、向こう側の空気は重くなっていく。
報告した後、俺は揺れる街並みを見つめながら目を細めた。揺れているのは決して街並みなどではない、この弱い自分。
だけど自分が弱いんだって戒めることさえも出来ずにいて。俺は眉を寄せ、きゅっと口を結んだ。
時間が経つ度見覚えのある街並みが見えてくる。俺の戦いの終点はもうすぐだ。
もうすぐで、この戦いから解放される。
それがたとえ、"リタイア"という道だとしても…。
俺はゆっくり目を閉じた。決して罪悪感がないわけではない。円堂の顔を思い出すたび、チクチクと胸が痛む。
それでも、今の俺は無力。頑張ろうと思える円堂をただただ羨ましいとしか感じることは出来なかった。
「ごめん…」
この電車を降りればもう、すぐそこだ。
終点。俺の選んだ道。
もう、辺りは紅く燃えている。
その紅さは俺にとったら無意味なのかもしれない。
冷めきった俺の心は、温かくなってはくれない。
普通だったらキレイだと感じる稲妻町も、今の俺にとったらただ帰る場所、それ以上でもそれ以下でもない。
『まもなく河川敷前、河川敷前。お出口は右側です』
そのアナウンスと共に俺は一つ、深呼吸した。
もう、帰れない。引き返すことは許されない。
「円堂…じゃあな…」
あの背中を夢見て
そうポツリと呟くと、俺は、終止符への最後の一歩を踏み出した―…。
to be continued...
風丸祭パート1。
次も続きます\(^o^)/
風丸オンリーですね、今回…(苦笑)
でもこういう切ないのを書くの楽しいんで、私は、全然いいんですけどねっ!!←
ではでは、もう1話どうぞ!
2012.10.7
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