首もとに回した腕 (54/109)
風丸くんからキャラバンを降りたと連絡を受けた後、私達は不穏な空気の中再び練習を再開させた。
そんな連絡があったものだから、休憩前に比べればみんなの動きにキレがなかった。どこか抜けてしまっているような、そんな感じがした。
結局最後までみんなのキレが戻ることもなく、今日の練習は終わった。グラウンドはより一層オレンジさを増す。
使い終わったタオルやドリンクを抱え、何となく私は不安げに雷門中の門を見つめた。
「…っ…風丸くん…!」
するとそこには小さいながらも水色の彼の影があった。
その水色の彼は躊躇うような仕草を一瞬見せた後、ゆらゆらと肩から掛けている鞄を揺らしながらゆっくりこちらに歩んできた。
「おーい!朝比奈ー?って…風丸ッ!」
きっと彼に気付いたであろうみんなはその台詞と共に立ち止まった。
そう、本当に風丸くんが帰ってきてしまったのだ。
だんだん大きくなる彼の姿は何とも弱々しくて、思わずズキンと胸が痛んだ。
虚ろな瞳には光は宿っていない。疲れ果てたようなその姿は彼とはとても思い難かった。
「ごめ…ん…。俺…」
「ううん…今は何も言わなくて大丈夫。話は…ちゃんと聞くから…無理はしないで…」
「…っ…ごめん…」
視線はまだ一度も合わない。一方的に見ているその彼の瞳はその間もずっと揺れていた。
私は優しく彼の肩に手を乗せると、後ろにいたみんなに着替えてくるよう促した。
そしてもう一度風丸くんの方に顔を向けると静かに目を細めた。
「お疲れ様…風丸くん…」
「っ…朝比奈…」
やっと、やっと目が合った。
私がそう言ってやっと彼と目が合った。
どうしたの?
なんて今は聞かない。
大丈夫?
なんて聞かない。聞けない。
今は、そんな後ろ向きな言葉よりももっと必要な言葉があると思った。
お疲れ様って。今まで頑張った分、その言葉を。
どんな理由があったのだとしても、頑張ってきた彼にそう伝えなきゃって思えた。
風丸くんの揺れていた瞳には静かに涙が溜まっていく。
それは今まで我慢してきた証拠。頑張ってきた何よりの証拠。
「…っぐ…朝比奈……」
彼の肩が静かに揺れ始める。
瞳には静かに光が宿っていく。
「よく…頑張ったね…」
「…っ…」
風丸くんの唇は静かに結ばれた。ぎゅっと唇を噛み締める様子はきっと出そうな涙を堪えているんだろう。
はっきり言えば私には何も出来ない。これを乗り越えるのは彼自身だから。
私には何も出来ないけど、それでも心のどこかで支えになりたいって思ってる。
それは言葉よりも先に行動にと出ていたんだ…。
「おかえりなさい…風丸くん…」
首もとに回した腕
あったかい彼の体温を感じながらそう小さく囁いた―…。
to be continued...
ふふふ(^p^)
ずっとずっとやりたかった場面がやっと…!!
でも本当は風丸くんから抱きつく予定だったんです!!
雰囲気的に夢主ちゃんかなって…夢主ちゃんからにしちゃいました(^O^)
しかも雷門中ではなく別の場所の予定でしたが、今後のネタバレになっちゃうんで言いません。
と言ってもそう大して重要な場所というわけではないです!!
場面としては重要なんですが…!!
これからバンバン風丸くんを出せると思うと非常にウキウキしてる管理人です(*´`*)!!
ではでは、風丸祭でした(笑)
もう少し風丸祭は続きますよっ←
2012.9.27
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