隣にいるだけで (46/109)
【半田視点】
「朝比奈遅いね。今日は来ないのかなぁ」
「ですかねー?」
今日はまだ朝比奈は来ていない。
時折用事があって来ないことはあるがほぼ毎日のように来てくれているため、時間が過ぎる度みんなの不安が募っていった。
そこまで過保護になる必要性はないと思うが、俺はその話を小耳に眉を寄せた。
「ま、来ない日もあるだろー…。俺ちょっと飲み物買ってくる」
「よっ」とベッドから降りると俺はそう言葉を発し病室から出た。
でも、きっと分かっているとは思うが実は少し悲しかったり。これが一種の現実逃避ということは重々承知している。
もう何度も弄られれば次の展開は分かってしまうもので。
きっとその事に関して何か弄ってくるだろうと察した俺はマックス達よりも先に手を打った。
飲み物なんて本当に欲しい訳ではないものの、買って来なければきっとおかしいと感じるだろう。
持っていた財布に少し力を込めると自動販売機に向かって歩き出した。
行かなければ良かった、なんて今更後悔しても無駄なんだろう…。
廊下を歩いていた時、いつも聞き慣れているアイツの笑い声が聞こえた。
俺はびっくりしてその声のする方に近付いていく。すると一点から光が漏れていた。
さらに近付いていくとドアが少し開いていたので、深入りしすぎかと思ったが通りすがりに少し覗いてみた。
「っ…!」
朝比奈だった。
やっぱり予想通り、朝比奈がここにいた。その事実を理解するのには少々時間がかかった。
朝比奈の他にそこからもう一人見覚えのある奴が見える。
確か、帝国の…。
まだ新しい方の記憶にその男の姿があった。
名前こそ忘れたが見覚えのある奴ということにちくりと胸が痛んだ。
病室の札を見てみれば確信する記憶。
やっぱり…。と俺は深めのため息をつくと、その男と目が合った気がして沃さと歩き出した。
焦りながらも徐々に沈んでいく俺。
本当に、自惚れているんだなぁと俺は眉尻を下げ俯いた。
するとしばらくした後、先ほどの辺りからまた聞き慣れたアイツの声がした。
「半田くーん!」
「っ…朝比奈…」
ピクンと肩を震わせ振り返ればやっぱりあの彼女の姿。動かしていた足を止め、待つようにすると朝比奈はタタッと走って来た。
その姿を、嬉しいような、寂しいような、複雑な想いのまま見ていると朝比奈が小さく首を傾げた。それに何でもないというように軽く首を横に振ると俺たちは再び歩き出した。
「さっきの奴ら、帝国の…?」
「うん…。大きな怪我、しちゃったみたいで…」
そんなこと、聞かなくたって本当は分かっていたことだった。帝国の奴らということなんて名前確認したし、顔と名前も何となく一致したから。
でも気を紛らわすためということもあり、そんな会話をしていた。
きっと朝比奈は俺がどこに行くかとか知らずに着いてきてくれているんだろうと察した俺はジュースを買いに行くとだけ理を入れておいた。
それでも「着いていっていい?」と言ってくれたことにちょっぴり嬉しくなった。また自惚れてるんだなぁと思ったが、今回だけはと少し胸を弾ませることにした。
隣にいるだけで
今は幸せなんだから―…。
だから、それ以上は望まないようにしようと心の隅で思っておいた…。
to be continued...
半田くん、よく逃げる(笑)
もう定番となりつつある半田くんの弄られですが…。
病室に(2人で)帰ったらどうなることやら(^O^)
最近は2話連続更新が増えてます。少しでも流れで読めたらな…という願いで、ね…。
さぁ、次からは久々?の半田パート!!
でも短いですが←
2012.8.20
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