重なる面影 (41/109)
「そのままでいいよ。無理しなくてもいいから…」
私は柔らかくそう笑うとゆっくりイスに腰掛けた。
そして、緊張により痺れる手を抑えるように膝の上で握り拳を固める。
「他の部員から聞いたよ…。今回のこと…」
その私のセリフで2人の顔は一瞬歪む。でも私はさっきも言ったように責めるわけでもないし、笑いに来たわけでもない。
支えに来た。
私はその後も淡々と話を進めていった。
「私の部員もね…無理してた。このままじゃダメなんだって…キャプテン見て奮い立ってたみたい」
強くなりたい。そう言って彼は無理して練習を続けようとした。
もちろん、私は選手を支えることが仕事だから彼を止めた。
本当のことを言ってしまえば今でも不安だった。
この選択が本当に当たっていたのか、と…。
でもその後、彼がありがとうって言ってくれた。
だから私は今もこうして支えようと思えることが出来た。
私はただ純粋に嬉しかったの。
あれほど苦しんでた彼が、辛そうな表情ばかり見せていた彼が笑ってくれたことに。
少しでも支えになれたんだって思えたから。
私のするべきことは、やっぱりコレだったんだって思えたから。
そしてその後彼と廊下を歩いている時。彼はこういった。
「ありがとう朝比奈…。なんかさ、想いぶつけたらスッキリした」
きっと、その想いを誰にも言えずずっと溜め込んできたのだろう。
想いをぶつけてくれた彼はそう爽やかな笑顔で言ってくれた。
「きっと、2人を動かした何かがあったんだよね…」
彼が円堂くんを見て奮い立っていたように、きっと彼らにも、彼らを動かしていた何かがあると私には思う。
エイリア石に頼ってしまいたくなるほどの想いが、彼らの中にあったんだろう。
「だから…自分の中で溜めてた想い、私に話してくれないかな…」
そうすればきっと、今よりもずっと楽になると思うの。彼のように。
彼らは唇を噛み締め、自分の想いと葛藤している。
そんな様子を見て、私はふっと笑うと静かにイスから立ち上がった。
「無理する必要はないよ…。そりゃあ、見知らぬ人になんて簡単には言えないもんね」
たった一度で話してもらおうなんて最初から無理だって分かっていたから。
少しずつ、ゆっくりでもいいから距離を縮めていこうと思ってるから。
「また、来てもいいかな…?良かったらそれまでに考えておいてくれるかな…。でもこれだけは覚えててほしい」
ここから去ろうと立ち上がった私だか、1つ言い忘れていたことを思い出したように言葉を紡いだ。
「どんなに敵だった相手でも…私は、支えたいの。敵も見方も関係なしに、1人の人間として、ね…」
それだけ言うと私はドアに向かって歩き出した。
そんなときだった。
下方から、彼の低い掠れた声が聞こえてきた。
「羨ましかったんだ…」
私は目を見開くとその声の主の方を見た。
視線が交わることはない。
彼はただ、天井だけを見つめてそう呟いた。
重なる面影
一瞬、私はまたあの彼と重ねてしまったんだ―…。
to be continued...
佐久間動き出した!!←
でもちょっとコレは…ねぇ…(苦笑)
やりすぎじゃないかって思いますが、ちょっとこの場面、ダークエンペラーズ篇辺りでも活用出来るんじゃないかなぁってワクワクしてきてます(^O^)
先に話全部考えるのもいいですけど、たまにはアドリブもいいもんですよね!!
2012.8.8
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