だから私は (40/109)
ドアを開けるとサァッと暖かな心地よい風が私を包んだ。
前を真っ直ぐ見つめればそこには予想通りというべき2つの影がある。
「こんにちは」
突然の訪問で驚いたよう彼はその私の言葉にパチパチと瞬きさせるだけだった。
そう、源田幸次郎だ。
彼の怪我は比較的まだ良い方で身体を動かすことは出来るらしい。
病室の奥側のベッドにいる彼は上半身だけ起き上がらせ私をまじまじと見つめていた。
そしてもう1人の彼。
私はゆっくり中へと足を踏み込むとベッドに横たわるもう1人の彼に、そっと目を移した。
静かに交錯する彼の左目。隠された右目からは何を感じているのか察することは出来ない。
その残された左目も虚ろな目つきをしており、彼の感情を理解することは出来なかった。
ただ、私が感じたのは虚しさだった。
きっと動かすことが出来ないのだろう。
視線が交わるだけで彼はピクリとさえ動かない。
私は眉間に眉を寄せるとゆっくり視線を落とし、震えそうな唇を抑え、無理やりこじ開けるように口を開いた。
「初めまして、なのかな…。私は雷門中サッカー部のマネージャー、朝比奈楓香です」
「…っ…!」
驚くのは無理ない。いきなり誰かが来たと思えばこの前戦ったばかりの雷門中の奴なんだから。
その場に同席していなかったにしろ、彼らからすれば"雷門中"という語句に反応してしまうのはごく自然のことだから。
「大丈夫。」
責めるわけでもないし、笑いに来たわけでもない。そう補足すると私は2人にニコッと笑いかけた。
「2人のことは知ってるよ。フットボールフロンティアで戦ったもんね!」
帝国学園となればサッカー強豪校。知らないはずがない。
少しでも警戒心を解いてもらえるよう笑顔を絶やさず話すと彼らもやっと落ち着いてくれたようで。
見開けていた目はだんだんと小さくなっていった。
「ちょっと…お話、いいかな…?」
私は苦笑を浮かべながらもそう彼らに言うと、近くにあったイスに腰をかけさせてもらった。
傷付いている彼らと接するなんて難しいとは分かってる。でもやっぱり、見放せないんだ。
心のどこかで、彼と重ねてしまっているから…。
全く違う人物だとは知っている。見た目だって性格だって全然違う。
でも、"強くなりたい"その想いは一緒だったから。だから私はこうして彼らに声をかけた。
もう、二度と、あの表情は見たくないから―…。
だから私は
敵だった彼らでさえ、支えたいと思ったの―…。
to be continued...
どこまで心配性なのかは分かりませんが…。
だんだんヒロインが怪我していく(キャラバン降りる)キャラとばかり絡んでいく気がします…。
病んでたりね!!
でも今回は厚かましすぎますが目を瞑ってくださいませ…!!
2012.8.3
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