二度目のサヨナラ (37/109)
「そっか…。染岡くんも怪我しちゃったんだ…」
「あぁ…真帝国学園戦の時に…」
染岡くんの離脱の話を含め、ついこの前起きた真帝国学園戦のことを聞きながら、出発地点である雷門中に向かっていた。
不幸な怪我、勝つためならどんなことでも、自らの身体を壊すようなこともしたという2人の話。何もかもが私の胸に突き刺さった。
そして、目的地である雷門中に久しぶりに足を踏み入れると一番に目にしたのはイナズマキャラバン。その隅にいるみんなを目にしたとき、懐かしさでじんわりと目頭が熱くなるのを感じた。
「楓香…っ!」
私の存在に気付き、その声と共に目に映ったのは一之瀬くんだった。
一之瀬くんはこちらに向かって走ってくると、出発したときのようにぎゅっと私を抱きしめた。
「久しぶり…楓香…」
「久しぶり、一之瀬くん…」
私がそう言うと一之瀬くんの抱きしめる手はよりいっそう強くなる。でもそれは私の頭にあることを思い浮かばせた。
「一之瀬くん、ダメだよ。秋ちゃんに誤解されちゃう」
私は一之瀬くんの腕を取り、ニコッと笑って離させた。
「だって、一之瀬くんが好きなのは私じゃないんだもん。秋ちゃん、なんでしょ?」
そう、一之瀬くんが好きなのは私じゃない。あの優しい秋ちゃんなんだもの。
「私はずっと昔から…相談相手だもん…ね!」
「そう、だね…っ…」
私がそう言うとまた一之瀬くんはあの時の寂しそうな表情を見せた。
「…?」
やっぱり気がかりなその表情にハテナを浮かべるも私は一之瀬くんの背中を押してみんなのところに向かった。
「ほらほらっ置いていかれちゃうよ!」
「楓香…」
「風丸くんも!行こう!」
「あ、あぁ…」
反対に風丸くんを話の置いてけぼりにさせちゃったかな、なんて思いながらも私は振り返って風丸くんにそう笑いかけた。
しばらく走っていけば松葉杖を付いた染岡くんが目に映る。本当に怪我をしてしまったんだ、とそんな染岡くんを見て私は顔を歪ませた。
ふと染岡くんの隣を見てみれば見覚えのない、マフラーをした白い髪の男の子が見えた。
キャラバンの辺りを見てみるとそこにも知らないメンバーがいる。
あぁ…半田くん達の代わりに入った子達なんだ…。
彼らが抜けて新しいメンバーが増えたんだとすぐに察することが出来た。それに寂しさという感情を覚える。
確かにこれは私自身が選んだ道。そんなことは分かっているけれど、知らないうちに新しいメンバーが増えて、知らないうちにみんなもっと強くなっている。
私が知らないうちにみんなが変わっていっていることに感じるんだろう、"寂しさ"という感情を。
私が目を細めて新しい彼らを見ていた時、私の隅で緑掛かった黒色の髪の毛が揺れるのが映った。
目が合うとその人はこちらに向かってきた。
「ちょっといいかしら」
「瞳子…監督?」
そう、私と目が合ったのは瞳子監督だった。瞳子監督は苦そうな何か疑問を浮かべているような、複雑な表情で眉を寄せて私を見る。それに私もハテナを浮かべることしか出来なかった。
「あなたの名前を伺っても宜しいかしら」
「え…朝比奈、楓香ですけど…」
「っ…。そう…」
一瞬見えた驚いたような表情。私の名前に何かあるのだろうか、そんなことを考える暇もなく監督はすぐに表情を戻すと「変なこと聞いて悪かったわね。」とだけ言うと元いた場所へと戻っていってしまった。
「瞳子監督…何だったんだろうね…」
「うん…」
一之瀬くんの台詞に私は相槌を打つことしか出来なかった。何かモヤモヤする、今の私にはそればかりが頭を支配していた。
未だに分からないその引っかかるモノに気付けないまま、もう出発するという指令が監督からみんなに送られた。
「楓香、見送りに来てくれてありがとう。じゃあ行ってくるよ」
「ドーナツありがとな、上手かった。じゃあまた」
そう最後に言葉を告げ、再びエイリア学園を倒すためキャラバンに乗り込む彼達。私は顔の横で小さく手を振りながら見送った。
しかし、パッと視線を感じた私は肩をすくめながら後ろを振り返った。するとあの白い髪のマフラーをしている男の子と目が合った。
彼は一瞬寂しそうな表情を見せると視線を逸らし、キャラバンへと乗り込んでいった…。
二度目のサヨナラ
複雑な思いのまま、二回目のサヨナラを―…。
to be continued...
フラグゥゥゥ!!
今回いくつフラグ立っちゃったかな…。
少なくとも3つは…いや、4つ((
幾つかは一番初めの予定とは完全に外れて出発してます(笑)
さぁ寄り道していきながら少しずつフラグ回収していきますね!!
まずは病院にいる…。おっとネタバレネタバレ(笑)
人気キャラにフラグ立ちすぎなのかもしれません(笑)。
頑張ります!!
2012.7.24
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