前向きな彼の姿 (36/109)
話を聞いていけば聞いていくほど、なぜか安心感が湧いてくる。円堂くんなら、みんなならきっと大丈夫だと、自然と頬が緩んでいく。
嬉しいという想いが溢れ表情へ表れたのか、私を見ると風丸くんもゆっくり微笑んでくれた。
しばらくそんな話をしていた時、風丸くんが何かに気がついたのか突然違う話を切り出した。
「そう言えば朝比奈。朝比奈はドーナツ、食べないのか?」
「……えっ」
私はその台詞を聞いて焦ってしまった。
なぜなら、食べないのではなく、食べられないのだから。
「まさか…、まさかコレ朝比奈のだったんじゃ…!」
「ちち…違うの!だから気にしないで食べてッ」
何かを察したのか、ガタンとイスから立ち上がり少し声を張り上げた風丸くん。そんな風丸くんに驚き、私も同じようにイスから立ち上がった。
私が買ってきたドーナツは元々、風丸くんと会うなんて思っていなく6個だった。彼らに渡すことはもちろんだが、風丸くんにはなしというのも気分があまり進まない。そのため残っていたDポップを風丸くんに渡した、というわけで私のはない。
否定はしたものの、やっぱり私は嘘をつくのが苦手なようで。
「ごめん、俺、新しいの買ってくるよ!」
そう簡単にバレてしまった。
「いいの!本当に気にしないで…」
「ごめん…。てっきり朝比奈もあるんだと思ってて…」
「大丈夫、大丈夫だから!気にしないで」
まだいくつか残っているDポップの箱を机の上に置き、出て行こうとした風丸くんを引き止めると私はそう言った。
大丈夫だから。そんな意味も込め、私はにこっと笑った。
「僕たち…完全空気だよね」
「そうですね…。二酸化炭素並みに必要ないですよね」
「違うよ、少林。二酸化炭素は光合成するために必要なんだからさ…。どっちかというと窒素じゃない。いや、むしろ一酸化炭素かもしれない。僕たちは害だ」
「あぁ…確かに。確かにそうかもしれないですね」
「…っ!?」
そんなネガティブ発言と共に冷めた視線を送られた私たちは目を見開け、再び視線を交じらせると顔を真っ赤にさせ慌ててイスに座り直した。
「ご…ごめんなさい…」
なんだか無駄に恥ずかしさばかりが募って、かぁぁっと顔が火照っていくのが分かるくらい熱くなって。恥ずかしさのあまり顔を俯かせていた。
マックスたちは先ほど自分たちが言ったことにツボったのかさらに話を膨らませている。こんな恥ずかしい姿を見られていないだけよかったものの、私はしばらくの間俯いた視線を戻すことはできなかった。
「朝比奈、朝比奈」
入院している彼らがまた騒ぎ出した中、風丸くんはヒソヒソと小さな声で名前を呼んだ。ビクンッと肩を強ばらせた後、私はそっと風丸くんを見た。
すると風丸くんは、彼らしい笑みを浮かべるとゆっくり口を開きこう言葉を紡いだ。
「コレ…1つあげる」
元々Dポップというのは6つ入り。風丸くんは、後で食べるであっただろう6つのうちの1つを串で刺して私に差し出してくれていた。
私の視線の先には茶色の生地に、ピンクのイチゴのチョコでコーティングされた一粒のドーナツ。
私はまだ完全に理解出来ず、半信半疑の状態のままそのドーナツと風丸くんを交互に見た。
「いい…の…?」
「あぁ」
「ありがとう…!私、それ大好きなの」
やっぱり、風丸くんは優しいなぁ。私はその風丸くんの優しさに甘えてさせてもらうことにした。
「うん!おいしいっ」
パクリとそのドーナツを口にすると私は頬に手を添えてニコッと笑った。
そして風丸くんはその私の表情を見て目を細めて笑うと、鞄を持って立ち上がった。
「それじゃあ俺、そろそろ行くな」
「あっ、待って風丸くん。私も…キャラバン見送りに行っていいかな…?」
「あぁ!みんなも喜ぶよ!」
「えぇ…。僕たちも行きたいよー…」
「みんなはまだ治りかけなんだし、外出許可出てないんだからダーメ!すぐ戻ってくるから今回はちょっと待ってて!」
「ぶー…。はー…い」
そして私はにこっとみんなに微笑みかけると席を立ち、風丸くんと肩を並べた…。
そして彼と共に雷門中へと向かった―…。
元気な彼の姿
それが、これで見納めになるなんて思ってもいなかったんだ―…。
彼の纏う闇は、これから濃く、深く、渦巻いていく…。
to be continued...
誰寄りなんでしょう(^O^)
入院組というかもはや半田くんが空気←オイ
大丈夫です!!どんなに遠回りでも半田くん寄りには変わりない!!
捉え方次第では若干あーん的な感じを想像できるんじゃ((
どっちでもいいんですけどね…!!
最後のぶー…はないかな、と思いましたが(笑)
さぁ、次回からはフラグ大量発生しますっ!!
皆様、追いついてきてくださいね…!!←
2012.7.19
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