いつもの風景 (33/109)
「おっ!今限定の抹茶だ!僕いっただきー」
「あ!松野さんズルいです!」
「少林、お前にピッタリなDポップあるぞ」
「は、半田さんまで酷いです!半田さんは半田さんらしく普通のでいいんですよ!」
「言ったな少林!なんだよ、俺は地味ってか?」
「誰も地味だなんて言ってませんよ!俺はチョコ味のポンデリングいただきますね!」
「あっ…!じゃ…じゃあ俺はエンゼルクリームもらうからな!上手いんだからなこれが一番!」
「あー半田さん!それ俺が狙ってたのに…」
「まだDポップあるけど…?」
「Dポップはもう卒業しました!」
「落ち着こうぜ、みんな…。無くなる訳じゃないんだからさ」
箱の中にある、いくつかのドーナツを巡りそんな声が病室に響いていた。
身体を動かしていないせいかみんなの元気は有り余っているようで。この病室ではドーナツ争奪戦が繰り広げられていた。
…そこまで過激ではないけれども!
みんなの元気な姿がまた1つ見れて、私は買ってきて良かったなぁと口に手を当てクスクス笑った。
「ドーナツ久しぶりィ!いっただっきまーす」
大きな口を開けその台詞と共にマックスが抹茶のドーナツを口にするとそれに続きみんなもドーナツを食べていった。
私はみんなの笑顔につられ、頬を緩めるとイスから立ち上がった。
「はい、風丸くん」
「ん?」
「残ってるの…Dポップになっちゃったんだけど…。良かったら食べて!」
「いいのか?貰っても…」
「全然!食べて食べて」
「ありがとう、朝比奈…」
箱の中を覗けばそこには1つ、Dポップが入っていた。
元々6個買ってきた訳だからもちろん1つは余る訳で。それがDポップ、ということだった。
風丸くんに会うなんて予想もしていなかったけど丁度良かったと思い、私は風丸くんに余りではあるがそのドーナツを手渡した。
風丸くんが1つドーナツを食べるのを確認すると、ニコッと笑いかけて私は自分のイスに座り直した。
「なぁ少林。ポンデリング一粒くれないか?」
「嫌ですよー。散々蹴散らしておいてそれはないです半田さん」
「なんだよー。ケチだなぁ!」
「半田さんに言われたくありません!」
「仲がいいんだか、悪いんだか…」
「ごめんね、ちゃんと次はみんなの好きなやつ買ってくるから」
喧嘩ではないみたいだけど、バチバチと火花を散らすように睨み合う2人を見て私はワタワタと焦りだした。
でもそれも、私の心を和ませてくれる1つでもあった…。
元気な仲間の姿が一番みんならしいから。
いつもの風景
それが、私の一番の薬なの―…。
to be continued...
ドーナツ争奪戦は遊び心です(笑)
宍戸がだんだん可哀想なキャラになってきてます。
ちょっとほのぼのなんてジャンルも入れてみました!
2012.7.10
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