ディスタント (32/109)
【半田視点】
いつもと変わらぬ朝。
マックスたちといつものように他愛もない話をしている時のことだった。
「おはよー!」
今日も、俺たちが入院してからほぼ毎日というくらい来てくれている朝比奈が姿を現した。ふわふわした髪を揺らし、いつもの柔らかい笑みを浮かべて入ってくる。
でも、言いかけた「おはよう」は喉へと帰っていき言葉になることはなかった。
「おはよう。元気してたか?」
青の髪を揺らし、朝比奈とはちょっと雰囲気の違う爽やかな笑みを浮かべた風丸が俺の目に映った。
そう、いつもと違うことと言えば朝比奈の手に箱らしきものがあることと風丸が来た、ということだった。
「風丸ー!久しぶりー」
「風丸さん!」
「大丈夫なのか、立ち歩いて…」
「全然平気ですよ!ほらっ」
マックスや少林に続き、影野も宍戸も彼の元へと駆けていった。
そしてこの前円堂に見せたように、回復の状態を風丸にも見せていた。
俺はというと、ベッドに入ったままの状態だった。突然の風丸の登場に思うように頭が働いてくれないらしい。ぽかんとした表情のまま、目の前の光景を見つめることしか出来なかった。
仲間が見舞いに来てくれることは嬉しいはずなのに、今回は違う感情が俺の中を渦巻いていた。
円堂の時には感じなかった、何かモヤモヤが俺の中を駆け巡る。
「そうだ!そういえば今日、ドーナツ買ってきたんだー!みんなで食べよう」
「やったー!ドーナッツゥ!」
ジャーンと朝比奈はみんなに手に持っていた箱を見せ付けると、みんなはワイワイ騒ぎながら再び中深くへと戻ってきた。
そして朝比奈が箱を開けるのを覗き込むように朝比奈の周りへと集まっていった。
さすがにこれ以上話に参加しないのはどうかと思い、俺もベッドから降りると朝比奈の元へと行った。
せっかく見舞いに来てくれたのに失礼だ。
俺はそう頭を軽く振ると気を改め、いつものように話へと混じっていった。
ディスタント
でも、どんなに話に入っていても、今は、朝比奈が遠い。
そんな気がした―…。
to be continued...
嬉しさよりも最初は驚きだったんですね、半田くんは…。
状況を理解してちょっぴり嫉妬…みたいな…?
2012.7.7
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